日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ノモス(古代エジプトの行政区分)
のもす
Nomos
古代エジプトの行政区分で州をさす。古王国時代に統治と財政(徴税)の効果をあげるために実施された制度で、各州が経済的にほぼ均等な力をもつように区画にくふうがなされた。その際、基本原則は灌漑(かんがい)水路を公平に配分することにあった。農業が経済の根幹をなしていたからである。知事は水路の開発、維持、管理の責任者であり、「水路の長」という称号をもっていた。各州はそれぞれの名称、主都、紋章、主神をもっていた。州の数は38または39であった。古王国末期に中央権力の衰弱とともに州間の争いが激化して内戦となり、これが古王国崩壊の大きな要因となった。中王国時代を開いたのは上(かみ)エジプトの優勢ノモスの長であった。この時代に旧区分は廃され、国土は三ないし四つの地方に分けられた。新王国時代には主要都市が隣接地を含めた行政単位となった。プトレマイオス朝時代には州制度が復活し、42州があった。
[酒井傳六]