日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ノルマ(ベッリーニのオペラ)
のるま
Norma
イタリアの作曲家ベッリーニのオペラ。二幕五場。フェリーチェ・ロマーニの台本に基づき1831年に作曲、同年ミラノ・スカラ座で初演。紀元前50年ころ、ローマ共和政末期のガリア地方を舞台とする悲劇である。ドゥルイド教の尼僧長ノルマは敵方のガリア総督ポリオーネに恋し子供までもうけるが、やがて彼は若い尼僧アダルジーザに心変わりしてしまう。深い苦悩のうちにノルマは、純潔を破り祖国を裏切った罪を償うため自ら火刑台に登り、またポリオーネも改心し、ともに炎に包まれる。いわゆるプリマドンナ・オペラで、主役にはベルカント唱法にたけたソプラノ歌手、しかも、清純な宗教的帰依(きえ)からごく人間的な嫉妬(しっと)の情に至るまでさまざまな感情を描き分ける歌唱表現力と演技力が要求される。ノルマの独唱「清らかな女神よ」やアダルジーザとの二重唱「最後のときまで」などの名曲がある。日本初演は1923年(大正12)カーピ・イタリア歌劇団。
[三宅幸夫]