ノルム(英語表記)norm

翻訳|norm

精選版 日本国語大辞典 「ノルム」の意味・読み・例文・類語

ノルム

〘名〙 (norme・Norm) 規範。法則。準則
※「文化主義」の論理(1919)〈左右田喜一郎〉一「『アプリオリ』は内容純化する過程に於てその一方的高昇の極限概念として見らるべき『イデー』であり〈略〉『ノルム』(規範)である」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ノルム」の意味・読み・例文・類語

ノルム(〈フランス〉norme)

規範。規準。法則。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ノルム」の意味・わかりやすい解説

ノルム
norm

岩石の化学組成をあらかじめ定められているノルム鉱物(標準鉱物)の重量比で表したもの。ノルム鉱物は火成岩中によく出現する鉱物のなかで比較的化学組成が単純なものを,微量成分などを除いた簡単な形で表したものである。それらを,化学分析の結果得られた岩石の総化学組成をもとに定められた規則に従って順次計算していく。この方法は,1902年にアメリカの岩石学者クロスW.Cross,イディングズJ.P.Iddings,ピアソンL.V.Pirsson,ワシントンH.S.Washingtonの4人により,火成岩をノルムをもとに分類する目的で提案されたもので,4人の頭文字をとってCIPWノルムと呼ばれている。しかし,ノルムによる火成岩の分類法は現在使用されていない。

 ノルム鉱物のうち,SiO2Al2O3を特徴とする一群のものをサリックsalic鉱物と呼ぶ(なかには必ずしもSiやAlを含まないものもある)。おもなものは,石英SiO2,コランダムAl2O3,長石(正長石KAlSi3O8,アルバイトNaAlSi3O8,アノーサイトCaAl2Si2O8),準長石(ネフェリンNaAlSiO4,リューサイトKAlSi2O6,カリオフィライトKAlSiO4)などである。一方,MgO,FeO,CaOを特徴とする一群のものをフェミックfemic鉱物と呼ぶ(なかにはそれらを含まないものもある)。おもなものは,カンラン石(フォルステライトMg2SiO4,フェアライトFe2SiO4),透輝石(ウォラストナイトCaSiO3エンスタタイトMgSiO3フェロシライトFeSiO3),ハイパーシン(エンスタタイト,フェロシライト),磁鉄鉱Fe3O4,イルメナイトFeTiO3,リン灰石3Ca3(PO42CaF2などである。ノルム鉱物には角セン石や雲母などのように天然の岩石によく含まれている鉱物が含まれていなかったり,また天然の岩石中にはノルム鉱物の成分でないものが固溶体として含まれていたり,ガラスが含まれていたりするので,ノルム鉱物組成と実際の鉱物組成(モードmodeと呼ばれる)とが一致しないのがふつうである。しかし,岩石の化学的性質(例えば,シリカに対する飽和・不飽和の程度やアルカリの過剰など)を知り,また,他の岩石との化学組成の比較をするのにきわめて有用である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノルム」の意味・わかりやすい解説

ノルム
norm

一般に,n 次元のベクトル空間のベクトル x のノルム ∥x∥ (大きさともいう) を, で定義する。 xxxx の内積である。これを座標を用いて書直せば,
となる。 x1x2,…,xn はベクトル x の成分である。このノルムの定義は,n=2 および n=3 の場合には,ピタゴラスの定理によって導いた,平面上および空間内の直観的大きさの概念と一致する。すなわち,常識的な大きさの考え方を拡張したものである。ノルムには次の諸性質がある。 (1) xx≧0 だから右辺の平方根は常に存在し,∥x∥≧0 である。 x0 ならば ∥x∥≠0 である。すなわち ∥x∥=0 となるのは x0 のときに限る。 (2) a をスカラー,|a| を a の絶対値とするとき,∥ax∥=|a|・∥x∥ である。 (3) また2つのベクトルを xy とするとき,∥xy∥≦∥x∥+∥y∥ である。これは三角不等式として知られている。このような性質は,ピタゴラスの定理による長さ以外にも,∥x1=|x1|+|x2+…+|xn| とか ∥x∥∞= max {|x1|,|x2|,…,|xn|} でも満足する。それで,これらの場合も,一般にノルムという。さらに
で距離を定義すると,ノルムの定義された n 次元ベクトル空間は,距離空間になる。ノルムは無限次元のベクトル空間である関数空間にも定義することができる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

岩石学辞典 「ノルム」の解説

ノルム

火成岩の化学組成を標準ノルム鉱物分子で表現したもの.岩石の酸化物の状態とした化学組成から計算する[Cross, et al. : 1902].この方法は理想的な状態ならば岩石から形成されると期待される鉱物種に化学成分を割り当て,その鉱物種と量を計算する方法である[Holmes : 1930, Johannsen : 1931].ノルムは4人の考案者の名を冠してCIPWノルムと呼ぶことがある.この方法で計算された鉱物種をノルム(Normative)鉱物または標準(standard)鉱物と呼び,実際に存在する鉱物(mode)と区別する.ノルム計算により得られた鉱物種の量比は現在でも利用されているが,この計算結果はあくまで化学分析の結果以上のものは示していない[鈴木 : 1994].4人の岩石学者たちは,このノルム鉱物の量比によって岩石の分類を試み,非常に細かい岩石の区分を行った.しかし現在この分類法は使われていない.CIPW分類法を見よ.ラテン語のnormaは規則,標準などの意味.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android