ノー・ナッシング党(読み)のーなっしんぐとう(英語表記)Know-Nothing Party

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノー・ナッシング党」の意味・わかりやすい解説

ノー・ナッシング党
のーなっしんぐとう
Know-Nothing Party

19世紀のアメリカの政党。正式にはアメリカ党という。1849年秘密結社として生まれ、団員たちがその組織についての質問に対して「アイ・ノー・ナッシング」(私はなにも知らない)と答えたのでこの俗称が生まれた。運動の目的は、移民、とくにカトリック系アイルランド人政治勢力の排除にあり、その背景には、37年恐慌以後の都市職人の窮乏化と彼らの労働組合の崩壊、公立学校における聖書教育問題をめぐるカトリック、プロテスタント間の対立、アイルランド飢饉(ききん)(1845)以後の移民の大量流入等に起因する民族集団間の暴力的抗争などがあった。この政党は、帰化資格居住年限を5年から21年に延長する政治綱領を掲げて、52年以後北部で急激に台頭し、55年選挙では六州の知事選出を果たすほどの勢いを示したが、奴隷制をめぐる南北対立の激化とともに分裂し、多くの党員共和党に吸収された。

[安武秀岳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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