ハイイロギツネ(読み)はいいろぎつね(英語表記)grey fox

改訂新版 世界大百科事典 「ハイイロギツネ」の意味・わかりやすい解説

ハイイロギツネ (灰色狐)
gray fox
Urocyon cinereoargenteus

体型はキツネに似るが,耳が小さく吻(ふん)が短い食肉目イヌ科の哺乳類。北アメリカ中部から中央アメリカ,南アメリカ北部分布体長48~69cm,尾長27~45cm,体重3~6kg。頭骨の形状はキツネ属Vulpesとは明りょうに異なり,むしろタヌキに似る。体背面は青灰ないし灰黒色,腹面は白色で,首から体側,尾の下面にかけては濃赤褐色。背すじから尾の正中線,尾先は黒い。森林,低木林,沼地にふつうつがいですみ,おもに夜行性で,日中は茂みや岩の間,樹洞などに潜む。地上生だが,敵に追われたり,好物の果実をとるときなどは巧みに木に登る。食性は広く,ネズミ,リス,小鳥,卵,昆虫などのほか,野ブドウやサクランボなどの果実や穀類もよく食べる。妊娠期間は推定51~63日で,北半球では初夏に1産4子を生む。飼育下での寿命は13年8ヵ月の記録がある。

 なお,近似種に小型で,カリフォルニア沖のサンタバーバラ諸島などの小島にだけ分布するヒメハイイロギツネ(シマハイイロギツネ)U.littoralisがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイイロギツネ」の意味・わかりやすい解説

ハイイロギツネ
はいいろぎつね / 灰色狐
grey fox
[学] Urocyon cinereoargenteus

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。一般形態がキツネ属Vulpesに似るのでしばしば同じ属とされるが、系統的にオオミミギツネやタヌキに近縁な原始的な種で、それらと同じく下顎(かがく)下縁の後部に顕著な段(角下葉)があり、ハイイロギツネ属に含めるのが妥当と思われる。頭胴長40~73センチメートル、尾長27~34センチメートル、体重3.5~6キログラム。体の背面は灰色で側腹と四肢が鮮やかな赤褐色、のどは白色、尾の上面に黒色の長い毛があり、尾端は黒色。カナダ南部からベネズエラまでの森林、やぶ地にすみ、敵に襲われると木に登って難を避ける。主として夜行性、雑食性でウサギ、ネズミ、鳥、昆虫、草、種子、果実などを食べる。3~4月に2~7子を産む。

[今泉吉典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハイイロギツネ」の意味・わかりやすい解説

ハイイロギツネ
Urocyon cinereoargenteus; gray fox

食肉目イヌ科。体長 50~75cm,尾長 30~40cm。前後肢,体の上面が灰色なのでその名がある。頸の両側,前後肢の下部,尾の下部は赤褐色。耳介や鼻先は短い。このような形態は,イヌ科のものよりネコ科のものに似ている。また木登りがうまく,イヌ科のものとしては珍しい習性である。日中は樹洞や地下の穴にひそみ,夜間,ネズミ,ノウサギ,昆虫類などを食べる。カナダ南部からアメリカ合衆国,メキシコを経て,南アメリカの北部まで分布し,森林,藪地,ときには岩場などにすむ。

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