ハイム(Georg Heym)(読み)はいむ(英語表記)Georg Heym

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ハイム(Georg Heym)
はいむ
Georg Heym
(1887―1912)

ドイツの詩人。大学で法学を修め司法官試補になったが、すぐ勤めを辞めて文学活動に専念。ヒラーを中心とした前衛的な作家集団「新クラブ」の有力メンバーとして旺盛(おうせい)な詩作活動に入り、劇作などにも意欲をみせていたが、冬のある日スケートに出かけて溺死(できし)、短い生涯を閉じた。最初は印象派および新浪漫(ろうまん)派の影響下にあったが、やがて「目覚めた幻想力」、異常な感覚力により都会の醜悪、病苦、孤独、死の恐怖をとらえ、暗澹(あんたん)たる終末風景あるいは黙示録的光景を幻視的に描き出すという独自の詩風を築いた。暗喩(あんゆ)言語、擬人法、神話的形象を駆使した手法は、彼を初期表現主義における独特の存在にしている。彼にとって詩作は、歴史的過程における現実のあらゆる局面、すべての具体的行動を全面的に否定し続ける行為であった。おもな作品は、詩集永劫(えいごう)の日』(1911)、戯曲アトランタ』(1911)、遺稿詩集『生の影』(1912)など。現在は全集も出ている。

[内藤道雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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