ハコネサンショウウオ(読み)はこねさんしょううお

改訂新版 世界大百科事典 「ハコネサンショウウオ」の意味・わかりやすい解説

ハコネサンショウウオ (箱根山椒魚)
Onychodactylus japonicus

サンショウウオ科の渓流性サンショウウオ。本州,四国に分布し,全長10~19cmほどで尾はその半分よりも長い。一般に雄は雌よりも大きい。変態後も肺を生ぜず,もっぱら皮膚呼吸を行い,本種と朝鮮半島,沿海州産のハコネサンショウウオモドキO.fischeriとで1属を構成する。体背面は紫がかった暗褐色か黒色で,中央部には赤みがかったオレンジ色の帯模様があるが,体色,斑紋には変異が多い。標高500~2500mの山地の渓流周辺部にすみ,繁殖期には雌雄ともに各指の先端に角質の黒いつめを生じ,また雄の後肢肥大し第5趾(し)の外縁も広がる。しかしつめを欠くものや後肢の肥大がわずかな個体もある。産卵期は5~7月ごろで,流れの速い渓流に大群が集まり,源流付近の大きな岩の隙間などに産卵する。幼生期間は2年余りで全長6~9cmほどになり,各指に鋭いつめをもつ。乾燥したものは民間薬用に供せられ,繁殖期に大量捕獲される。
サンショウウオ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハコネサンショウウオ」の意味・わかりやすい解説

ハコネサンショウウオ
はこねさんしょううお / 箱根山椒魚
[学] Onychodactylus japonicus

両生綱有尾目サンショウウオ科の動物。青森県以南の本州北部および中部山地、紀伊山地、中国山地、四国の剣山(つるぎさん)および石鎚山地(いしづちさんち)に分布する。体は細長く、尾は頭胴部より長い。背面は紫を帯びた褐色で、頭部から尾の上縁にかけて橙黄(とうこう)色や紅色の縦条があるが、その形状には変異が多く、点状となることもある。腹面は黄褐色。雄の後肢は著しく太い。肺がなく、主として皮膚だけで呼吸する。全長10~18センチメートル。森林内の渓流域に生息し、5~7月に産卵する。卵嚢(らんのう)は円筒状で、細い柄で水中の岩の下面に付着する。卵は黄白色で径約5ミリメートル、卵数10個内外。幼生は流水中で生活し、3年後に変態して上陸する。

倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハコネサンショウウオ」の意味・わかりやすい解説

ハコネサンショウウオ
Onychodactylus japonicus

サンショウウオ目サンショウウオ科。体長 11~18cmで体は細長く,尾は体長の2分の1以上を占める。背面は暗赤褐色で中央に広い橙黄色帯があるが,不規則な斑紋となったり消失したりして変異がある。腹面は黄褐色。産卵期は5~7月で,渓流の日光を通さない岩の間隙などに5~7個の白色の卵を含む1対の卵嚢を産みつける。またこの時期には雌雄とも黒い鋭い爪を生じ,雄は後肢が著しく肥大する。幼生は渓流に生息し,肢に爪をもつ。本州,四国の山地に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のハコネサンショウウオの言及

【サンショウウオ(山椒魚)】より

…頭骨の構造の違いで別属に分けられるオオダイガハラサンショウウオPachypalaminus(=Hynobius) boulengeri(イラスト)は,紀伊半島・四国・大分県の山地に分布し,全長16~20cmに達する日本産サンショウウオの最大種であるが,形態的には他種と大差がない。本州・四国の山地に分布するハコネサンショウウオOnychodactylus japonicus(イラスト)も全長15~19cmと大きく,円筒状の尾が全長の1/2よりも長い渓流産卵型で,肺を欠く。北海道東部の湿原に生息するキタサンショウウオSalamandrella keyserlingiは,サハリンからシベリア,中国東北に広く分布する種で,後肢の指が4本。…

【サンショウウオ(山椒魚)】より

…頭骨の構造の違いで別属に分けられるオオダイガハラサンショウウオPachypalaminus(=Hynobius) boulengeri(イラスト)は,紀伊半島・四国・大分県の山地に分布し,全長16~20cmに達する日本産サンショウウオの最大種であるが,形態的には他種と大差がない。本州・四国の山地に分布するハコネサンショウウオOnychodactylus japonicus(イラスト)も全長15~19cmと大きく,円筒状の尾が全長の1/2よりも長い渓流産卵型で,肺を欠く。北海道東部の湿原に生息するキタサンショウウオSalamandrella keyserlingiは,サハリンからシベリア,中国東北に広く分布する種で,後肢の指が4本。…

※「ハコネサンショウウオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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