ハタネズミ(読み)はたねずみ(英語表記)Japanese meadow vole

改訂新版 世界大百科事典 「ハタネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハタネズミ (畑鼠)
Microtus montebelli

本州と九州にすむ,尾と四肢が短く,ずんぐりした体つきの,目の小さな半地下生のネズミ。齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。しばしば大発生して農作物や植林地の苗木を食害することで話題を呼ぶ。毛はビロード状で柔らかく,長く,耳はほとんど頭の毛に隠れる。体色は灰褐色。体長11~13cm,尾長3.5~4.5cm,体重30~40g。ふつう平地から標高1200mくらいまでの農地,牧場,草原,明るい林にすむが,とくに水場近くの湿潤草地を好み,地中に延長30mに達する複雑なつくりのトンネルを掘って通路,巣,貯蔵庫とし,集団生活を送る。食物は草,種子,いも類,樹皮など。雌は,妊娠期間21日で,1産1~10子,ふつう5子を年に数回,春~秋にかけて生む。同属(英名vole,meadow mouse)の近縁種約50種が北アメリカ,アジア,ヨーロッパにすむ。なお,四国ではスミスネズミが,北海道ではエゾヤチネズミが,ハタネズミに似た生活を送っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハタネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハタネズミ
はたねずみ / 畑鼠
Japanese meadow vole
[学] Microtus montebelli

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。本州、九州、佐渡島分布が限られている。頭胴長10.6~12.5センチメートル、尾長3.4~4.6センチメートル、体重35~40グラム。草原、幼齢植林地、堤防笹原(ささはら)、水田、畑などにすみ、森林が伐採され、草原状の場所ができると亜高山帯や高山帯にも進出する。富士山頂でも採集されている。草食性で緑葉、茎、地下茎などを食べ、冬にカラマツなどの幼木の樹皮や根を食害する。農作物への被害も大きい。草食への適応として大腸や盲腸が発達し、門歯(切歯)、大臼歯(だいきゅうし)ともに無根歯である。脳は相対的に小さい。目や耳介が小さく、尾が短いのは地下生活への適応である。ときに大発生する。低地では夏に繁殖休止期があるが冬にも繁殖し、東北地方や長野県では春から秋に繁殖する。1産2~7子。山間部ではキツネ、イタチ、テン、フクロウ、ヘビ類などが天敵として重要である。新潟、秋田、山形各県の河川流域にみられるつつが虫病は、ハタネズミに寄生するアカツツガムシが媒介し、夏に発生し致死率も高い。一方、草食家畜の栄養生理に関する研究のためのモデルとして、ハタネズミの実験動物化が進められている。

[宮尾嶽雄]


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百科事典マイペディア 「ハタネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハタネズミ

齧歯(げっし)目ネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。体長9〜13.5cm,尾3〜5cm。本州,九州,佐渡島,能登島に分布。畑,草原,河原などに複雑なつくりのトンネルを掘って集団ですみ,おもに草や木の根,樹皮などを食べ,農作物を食害する。年数回1腹1〜10子を生む。ときに原因不明の大増殖をし,ヒノキ,スギなどの造林地に大害を与えることもある。北海道には類縁のエゾヤチネズミがすむ。
→関連項目ネズミ(鼠)

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