ハチクラゲ(鉢水母)類(読み)はちくらげるい(英語表記)Scyphozoa

改訂新版 世界大百科事典 「ハチクラゲ(鉢水母)類」の意味・わかりやすい解説

ハチクラゲ(鉢水母)類 (はちくらげるい)
Scyphozoa

腔腸動物門(刺胞動物門)の一綱。鉢虫類,真正クラゲ類ともいう。ごく少数の例外を除いて,ポリプ型とクラゲ型の世代があり,クラゲ型がポリプ型よりも大きく発達している。ミズクラゲアカクラゲアンドンクラゲタコクラゲなど世界から230種ほどが知られている。かさは円盤状や半球状で,厚いゼラチン質の中膠(ちゆうこう)からなり,エチゼンクラゲの大きなものではかさの直径1m以上,体重が150kgになるものもある。またかさの中膠中に藻類が共生していて褐色や緑色になっているもの,激しい毒を含んだ刺胞(しほう)をもつものなどがある。雌雄異体で,胃腔が広がってできた胃囊の中に内胚葉性の生殖巣を生ずる。生活環は複雑で1世代に有性的な生殖を行うときと無性的にエフィラを生じてふえるときの両方をもつ場合(世代交代)とクラゲ型のみで繁殖する場合とがある。

 ハチポリプ亜綱Scyphostomidaeとエフィラ亜綱Ephyridaeとに分けられる。ハチポリプ亜綱はクラゲ型のみで,世代交代はせず,ジュウモンジ(十文字)クラゲ目Stauromedusaeと立方クラゲ目Cubomedusaeとを含む。立方クラゲ目のアンドンクラゲとヒクラゲ刺胞毒は激しい。最近は立方クラゲ目1目で箱虫綱(立方クラゲ綱)Cubozoaとすることが多い。エフィラ亜綱には冠クラゲ目Coronatae,旗口クラゲ目Semaeostomae,根口(ねぐち)クラゲ目Rhizostomaeに分けられる。旗口クラゲ目のミズクラゲは世界共通種で,多数の個体が発生して害を与えることがある。根口クラゲ目はいずれも大型になり,エチゼンクラゲは中華料理に用いたり,いろいろな食品に加工される。
クラゲ
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世界大百科事典(旧版)内のハチクラゲ(鉢水母)類の言及

【クラゲ(水母)】より

…腔腸動物(刺胞動物)門のヒドロ虫綱Hydrozoaとハチクラゲ綱Scyphozoaの自由遊泳型と有櫛(ゆうしつ)動物Ctenophoraの個体の総称(イラスト)。プランクトンの一員。…

【腔腸動物】より

クラゲイソギンチャクサンゴなどを含む比較的下等な一動物門。ヒドロ虫綱,ハチクラゲ綱,花虫綱の3綱が含まれる。体内が食物を消化する広い胃腔になっているところからこの名がある。また触手や他の部分に有毒な刺胞をもつので刺胞動物Cnidariaとも呼ばれている。かつてはクシクラゲ類が腔腸動物の中に含められていたが,体の構造上から有櫛(ゆうしつ)動物という別門にされた。多細胞動物ではあるが,体の構造は簡単で,中枢神経や排泄器はなく,消化系と循環系とがまだ分離していないなど進化の程度は低い。…

※「ハチクラゲ(鉢水母)類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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