ハナグモ(読み)はなぐも

改訂新版 世界大百科事典 「ハナグモ」の意味・わかりやすい解説

ハナグモ (花蜘蛛)
Misumenops tricuspidatus

クモカニグモ科の蛛形(ちゆけい)類。網を張らず草花の陰に潜み,そこにくる小昆虫を捕食している。雌は体長7mm内外,前体部と歩脚は若草色,後体部は白色背面に八字状の独特な褐色斑があり,後縁も褐色となる。雄は体長4mm内外,前体部と歩脚は褐色で背甲には1対の黒褐色縦斑がある。後体部は白色で背面中央は緑色となり,雌に似た褐色斑がある。若虫では腹部斑紋のない個体が多い。日本全国およびアジア,ヨーロッパに広く分布する。4~6月に成熟し,雌は葉を折り曲げた産室の中に卵囊をつくり,その上に乗って保護する。個体数が多く定着性も強いので,菜園や果樹園においては害虫駆除に役だっている。本属のクモは世界に約70種,日本にはハナグモのほかコハナグモがいる。そのほかハナグモと名のつくMisumena属,Misumenoiides属のクモが5種存在する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナグモ」の意味・わかりやすい解説

ハナグモ
はなぐも / 花蜘蛛
[学] Misumenops tricuspidatus

節足動物門クモ形綱真正クモ目カニグモ科に属するクモ。雌は全体黄緑色の美しいクモで、雌の成体では腹部に褐色の斑紋(はんもん)が現れる。体長5、6ミリメートル。雄は小形で腹部は緑色であるが、頭胸部や歩脚は褐色で3、4ミリメートル。多く花の陰で待ち伏せ、花を訪れる昆虫を捕食する。ほとんど年中みられるが、4、7、8、10月にとくに多い。旧北区系のクモで、日本では北海道から南西諸島にかけて広く分布する。近縁の小形種にコハナグモがある。

[八木沼健夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナグモ」の意味・わかりやすい解説

ハナグモ
Misumenops tricuspidatus

クモ綱クモ目カニグモ科。雌の体長 5mm,雄はやや小さい。黄緑色の美しい種で,成体になると雌の腹部背面に八字形の褐色斑が現れる。雄の頭胸部と歩脚は褐色。初夏から秋にかけて草木の葉上を徘徊し,花の陰にひそんで飛来する昆虫類を捕える。前脚を2本ずつそろえて方向探知器のようにゆっくりと動かす動作が特徴的。日本全国に分布し,市街地緑地でも普通にみられる。 (→カニグモ )

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