ハネジネズミ(読み)はねじねずみ(英語表記)elephant shrew

改訂新版 世界大百科事典 「ハネジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハネジネズミ (跳地鼠)
elephant shrew

体型はカンガルーネズミに似るが,吻(ふん)が長くとがった(英名はこれによる)小獣の総称。かつては食虫目ハネジネズミ科Macroscelididaeとされていたが,近年では食虫目ではなくウサギ目に近い独立のハネジネズミ目Macroscelideaとされる。西アフリカを除く,アフリカの北部から南部に1科4属15種ほどが分布。体長9.5~31.5cm,尾長8~26.5cm,体重30~420g。体はネズミ的だが,四肢が細く長く跳躍に適し,前足に5指,後足に3~5指がある。耳介と目が著しく大きく,食虫類にはない盲腸がある。開けた乾燥地に多いが,森林内や砂漠周辺,岩石地にすむ種もあり,ふつう単独かつがいで生活するが,集団をなす種もあり,多様である。地上生で,倒木の下,岩石の間,アリ塚の割れ目,齧歯(げつし)類が捨てた穴などを巣とし,ふつう日中に活動し,シロアリやアリ,バッタ,カタツムリや甲虫,小鳥や卵などを食べる。子はふつう雨季に生まれるといわれる。妊娠期間は約2ヵ月で,1産1~2子を生む。寿命は野生で1.5~2.5年,飼育下では5.5年の記録がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハネジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハネジネズミ
はねじねずみ / 跳地鼠
elephant shrew

哺乳(ほにゅう)綱食虫目ハネジネズミ科に属する動物の総称。しかし近年では、独立のハネジネズミ目とする説もある。この科Macroscelididaeの仲間はアフリカ特産で、イワハネジネズミ属Elephantulus、コミミハネジネズミ属Macroscelides、ヨツユビハネジネズミ属Petrodromus、テングハネジネズミ属Rhynchocyonの4属に15種ほどが知られている。吻(ふん)は細長く可動性で、鼻孔は先端に開く。前肢は短いが、後肢が長く、カンガルーに似た地上跳躍性である。目が大きいのが特徴。尾は長く、耳介は大きい。盲腸をもつ。歯式は

で合計36~44本。半砂漠、サバナ、森林などにすみ、昼行性で、岩の下や土中の穴に巣をつくり、よく成長した1、2子を産む。親は授乳のほか、かみ砕いた昆虫などを口移しに給餌(きゅうじ)する。交尾期以外は単独性で、行動範囲は非常に広く、コミミハネジネズミM. proboscideusのそれは1平方キロメートルもある。

阿部 永]


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