ハバネラ(英語表記)habanera[スペイン]

精選版 日本国語大辞典 「ハバネラ」の意味・読み・例文・類語

ハバネラ

〘名〙 (habanera 「ハバナ風」の意) 舞曲一つ。一九世紀前半キューバの首都ハバナを中心にはじまった。ゆるやかな二拍子リズム特色スペインを経てヨーロッパ各地に伝わり、ビゼーオペラカルメン」に使用したハバネラは特に有名。

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デジタル大辞泉 「ハバネラ」の意味・読み・例文・類語

ハバネラ【Habanera】[曲名]

ビゼーのオペラ「カルメン」の第1幕でカルメンによって歌われるアリア通称冒頭歌詞から「恋は野の鳥」の題名で知られる。
サン=サーンスバイオリンピアノのための作品。1888年作曲。キューバの民俗舞曲ハバネラのリズムを用いている。管弦楽伴奏版も知られる。アバネーズ

ハバネラ(〈スペイン〉habanera)

19世紀前半、キューバに起こった、ゆるやかな二拍子のリズムをもつ舞曲。
[補説]作品名別項。→ハバネラ

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改訂新版 世界大百科事典 「ハバネラ」の意味・わかりやすい解説

ハバネラ
habanera[スペイン]

スペイン語の発音ではアバネーラ。19世紀にキューバで行われたダンス音楽で,〈ハバナの(踊り)〉の意。アルゼンチンの音楽学者カルロス・ベガによれば,17世紀から19世紀前半までイギリスで愛好された社交的な民俗舞踊,カントリー・ダンスcountry danceは,17世紀末にフランスを経てスペインに伝わってコントラダンサcontradanza(フランスではコントルダンスcontredanse)と化し,それがキューバに伝えられてダンサdanzaと呼ばれた。1800年ころにはそのハバナ版が,ダンサ・アバネーラdanza habaneraとなった。スペインの作曲家セバスティアン・イラディエールSebastián Yradier(1809-65)はキューバ滞在中にハバネラを知り,そのスタイルで書いた作品《エル・アレグリートEl Areglito》と《ラ・パローマLa Paloma》を1840年代に発表した。前者はビゼーが歌劇カルメン》に取り入れてハバネラのアリアとして有名になり,後者は20世紀初頭まで,欧米で幅広く演奏された。ハバネラのリズムは2/4♫と1拍目で大きく跳ねるような感じをもち,このリズム感はアルゼンチンに伝わってタンゴを生み,イタリアでは《オ・ソレ・ミオ》のようなナポリ民謡に,日本でも《湯の町エレジー》(1948。古賀政男作曲),《別れの一本杉》(1950。船村徹作曲)をはじめ,多くの演歌調歌謡曲に取り入れられている。
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百科事典マイペディア 「ハバネラ」の意味・わかりやすい解説

ハバネラ

19世紀にキューバで行われたダンス音楽。スペイン語の発音ではアバネーラ。首都ハバナにちなむ名称。英国のカントリー・ダンスcountry danceが17世紀末にフランスを経てスペインに伝わりコントラダンサcontradanzaとなり,さらにそれがキューバに伝わりダンサdanzaと呼ばれ,そのハバナ版が19世紀初頭にダンサ・アバネーラとなったとされる。1拍目で大きく跳ねるようなリズムはアルゼンチンに伝わってタンゴを生んだ。サルスエラや通俗歌曲で人気を博したスペインの作曲家S.イラディエール〔1809-1865〕がハバネラのスタイルで作曲した《ラ・パローマ》は20世紀初頭まで欧米で広く演奏され,《エル・アレグリート》はビゼーの《カルメン》に採り入れられた。ラベルの管弦楽曲《スペイン狂詩曲》の第3曲,サン・サーンスのバイオリン独奏曲《ハバネラ》(1887年)も名高い。
→関連項目ミロンガ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハバネラ」の意味・わかりやすい解説

ハバネラ
はばねら
havanera スペイン語
havanera 英語
havanera フランス語

19世紀後半のヨーロッパ、とくにスペインで好まれた歌と踊り。キューバ起源といわれ、名称もキューバの首都ハバナに由来している。ゆっくりとした2/4拍子で、のちにタンゴにも取り入れられた♫のリズムが特徴的である。これはときに第1拍目が3連符になることもある。踊り手は、腕や腰など身体を官能的に動かすが、回るとき以外は足を床から上げない。ハバネラ形式の歌曲ではイラディエルSebastian Yradier(1809―65)の作品が有名で、ビゼーもオペラ『カルメン』第1幕にその一つを用いている。器楽曲は、アルベニス、ファリャ、シャブリエ、ドビュッシー、ラベルなど、スペインやフランスの作曲家に多い。

[関根敏子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハバネラ」の意味・わかりやすい解説

ハバネラ
habanera

19世紀キューバに興った舞曲の一形式。正しくはアバネラと発音する。ゆるやかな4分の2拍子。ビゼーの歌劇『カルメン』 (1875) に現れるハバネラのほか,シャブリエ,ラベル,ドビュッシーらの作品がある。

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デジタル大辞泉プラス 「ハバネラ」の解説

ハバネラ〔曲名:サンサーンス〕

フランスの作曲家サン・サーンスのピアノとヴァイオリンのための二重奏曲(1888)。原題《Havanaise》。『アヴァネーズ』とも呼ばれる。キューバの民俗舞曲ハバネラのリズムを用いている。

ハバネラ〔曲名:ビゼー〕

フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーのオペラ『カルメン』(1875)で歌われるアリア。原題《Habanera》。『恋は野の鳥』とも呼ばれる。

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