ハマウツボ(読み)はまうつぼ

改訂新版 世界大百科事典 「ハマウツボ」の意味・わかりやすい解説

ハマウツボ (浜靫)
Orobanche coerulescens Steph.

海岸や川原に生えるヨモギ属の根に寄生するハマウツボ科一年草。茎は黄褐色で太く,高さ10~25cm,鱗片葉がまばらにつく。葉は狭卵形または披針形で膜質,長さ1~1.5cm。5~7月,直立する茎の上部に穂状花序をつくり,淡紫色の花を密につける。唇形花冠は長さ約2cm,筒形で先は5裂し,唇形となる。おしべは4本,2本ずつ長さが異なる。子房は1室で,多数の胚珠をもつ。果実は狭楕円形の蒴果(さくか)で,長さ約1cm,2裂して多少の微小な種子をだす。北海道~琉球,朝鮮,中国,シベリア,ヨーロッパ東部に分布する。ヤセウツボO.minor Sutton(英名lesser broomrape)は全体に短い腺毛が生え,花は淡黄色である。ヨーロッパ原産で,関東や近畿の都市付近の草地に帰化している。おもにシロツメクサ類に寄生するが,キク科やセリ科にも寄生する。

 ハマウツボ科Orobanchaceaeは北半球の温帯~亜熱帯に分布し,14属180種ほどあり,すべて寄生植物である。ゴマノハグサ科近縁であるが,子房は1室で4個の胎座に多数の小さな胚珠がつく。日本には4属7種が知られ,ハマウツボ属3種,ナンバンギセル属2種,キヨスミウツボ属1種,オニク属1種がある。

 キヨスミウツボ(清澄靫Phacellanthus tubiflorus Sieb.et Zucc.は,カシ類やアジサイ類などの木の根に寄生し,山地木陰に生えるハマウツボ科の多年草。高さ5~10cm。全体肉質で白色。葉は卵形で鱗片状。5~7月に開花。花は十数枚集まった苞葉の腋(えき)ごとに1個ついて束生し,白色で長さ2.5~3cm。北海道~九州,朝鮮,中国の中部・北部,ウスリー,サハリンに分布。和名は千葉県の清澄山で採集されたことによる。また開花後黄色になるので,オウトウカ(黄筒花)の名もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマウツボ」の意味・わかりやすい解説

ハマウツボ
はまうつぼ / 浜靭
[学] Orobanche coerulescens Steph.

ハマウツボ科(APG分類:ハマウツボ科)の一年生の寄生植物。おもにカワラヨモギに寄生し、オトコヨモギに寄生するものはオカウツボといって区別される。茎は高さ10~30センチメートル、密に白色の毛があり、披針(ひしん)形の鱗片葉(りんぺんよう)をつける。5~7月、紫色の唇形花を多数開く。海岸から沿海地に生え、日本全土、および朝鮮半島、中国、シベリアからヨーロッパ東部に分布する。名のウツボは、花形が弓矢の入れ物である靭(うつぼ)に似ることによる。

 ハマウツボ属は花は穂状につき、萼(がく)は2片に裂ける。世界に約100種、日本には本種のほかに、小笠原にシマウツボが野生し、ほかに、おもにシロツメクサに寄生するヤセウツボO. minor Smithが帰化している。

[高橋秀男 2021年9月17日]

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