日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ハミルトン(Alexander Hamilton)
はみるとん
Alexander Hamilton
(1757―1804)
アメリカの政治家。イギリス領西インドのネイビス島出身。1772年に渡米し、まもなく独立革命に参加、77年にはワシントン総司令官の参謀となる。早くから強力な中央集権政府の樹立を力説。戦後は弁護士業を勤め、86年のアナポリス会議では州を代表して、フィラデルフィア連邦憲法会議開催(1787)の推進者となった。新連邦憲法の批准を確保するため、強力な言論戦を展開し、マディソンらと『フェデラリスト』85編を著し(1787~88)、批准の実現に多大の貢献をした。89年、ワシントン大統領下の財務長官を務める。商工業界を背景に、公債の額面償還、国立銀行の設立、輸入税・消費税の新設などにより公信用と歳入を確立し、新国家の財政基盤を整備した。フランス革命戦争下、親英的立場より中立政策を図り、国務長官ジェファソンと決裂。94年、「ウイスキー反乱」として知られる酒税反対のための農民争乱を鎮圧、連邦政府の権力を誇示した。95年に辞職したが、野にあっても国政に巨大な影響力を残した。1804年、政敵バーA. Burr(1756―1836)との決闘により死亡した。
[池本幸三]
『田島恵児著『ハミルトン体制研究序説――建国初期アメリカ合衆国の経済史』(1984・勁草書房)』