ハモグリガ(読み)はもぐりが

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハモグリガ」の意味・わかりやすい解説

ハモグリガ
はもぐりが / 葉潜蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目ハモグリガ科Lyonetiidaeの総称であるが、幼虫が潜葉性で葉の組織内部から食べるガを総称するときは、ハモグリガの英名としてleaf mining mothとよぶが、ハモグリガ科に限定するときは、とくに英名はない。大きくともはねの開張13ミリメートルくらいで、小形のものは開張5ミリメートルしかない。はねは非常に細く(披針(ひしん)形)、前翅翅頂部は長く伸びている。前翅は純白で、翅頂近くに帯状の斑紋(はんもん)と、黒紋をもつ美しい種が多く、前後翅後縁部の縁毛は、はねの幅よりはるかに長い。はねが細いため、翅脈退化は著しい。北半球に種の数が多く、日本産として学名をもつものは20種に満たないが、将来多くの未発見種が学界に登録されるものと考えられる。

 幼虫の大部分が潜葉性で、腹脚は4対、老熟するとハンモック状の繭、あるいは絹糸の束で覆われた繭をつくる。ヒルガオモグリガはサツマイモアサガオなどヒルガオ科の葉に、クリハモグリガはクリやクヌギの新葉に、ツツジハモグリガはヤマツツジなどの葉に、モモハモグリガはモモ、サクラ、リンゴなどの葉に潜る。幼虫が内部の組織を食べたあとのトンネル半透明になり、葉に文字を書いたような感じからジカキムシともよばれる。種ごとにその食痕(しょくこん)が異なる。

[井上 寛]

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改訂新版 世界大百科事典 「ハモグリガ」の意味・わかりやすい解説

ハモグリガ (葉潜蛾)
leaf mining moth

鱗翅目ハモグリガ科Lyonetiidaeの昆虫。翅の開張0.5~1.3cmの小さいガで,翅は非常に細長く,前翅頂は細長くのび,縁毛は翅の幅より長い。幼虫は大部分が潜葉性で,1枚の葉の中にトンネルを掘って,組織を食べ,老熟するとハンモック状あるいは絹糸の束で覆われた繭をつくる。寄生された葉には,種ごとに独特の食べ跡が残るため,寄主植物名とあわせて考えれば,ガの種類がわかることが多い。このように葉に幼虫の食べ進んだ跡のできる昆虫を,俗に字書き虫というが,これは潜葉性のガとは限らない。ハモグリガ幼虫の中には,潜孔の下面に小さな穴を開け,そこから糞を排出する種類もある。この科は世界中に分布しているが,日本では20種ばかり知られている。リンゴハモグリガの幼虫はリンゴの葉に潜って食害し,モモハモグリガは,モモ,サクラ,リンゴなどの葉に潜る。多発すると,早期落葉によって被害が出る。
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百科事典マイペディア 「ハモグリガ」の意味・わかりやすい解説

ハモグリガ

ハムグリガとも。鱗翅(りんし)目モグリガ科,ハモグリガ科など幼虫が植物の葉肉内に潜入する小型のガの総称。種類によって加害植物が一定しているが,中には数種の植物に加害するものもある。普通,1枚の葉だけを食害。加害葉は落葉しやすくなるので農業や園芸上の害虫が多い。

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世界大百科事典(旧版)内のハモグリガの言及

【ミャンマー】より

…上・下両院から成る立法評議会の選挙が行われ,任命制の長官10名で構成される行政参事会が設けられた。初めて成立したビルマ人の政権は,バモーを首班とするものであった。1930年代は,急進的な民族主義者が台頭した時代でもある。…

※「ハモグリガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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