日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハンフリー・クリンカー」の意味・わかりやすい解説
ハンフリー・クリンカー
はんふりーくりんかー
The Expedition of Humphry Clinker
イギリスの作家スモレットの書簡体小説。1771年刊。主人公のマシュー・ブランブルの一行が、旅先から日記形式の手紙を書いてつづった旅行小説。当時の温泉場として栄えたバースの町の生活を中心に描かれている。むっつりしているが親切、抜け目がないがお人よしの中年の紳士ブランブルが、幾多の困難を経て自己のいやしがたい愚かさを笑う気持ちは、スモレットその人のものといえよう。漫画的にグロテスクに描かれた妹の老嬢タビサ、無知で単純な女中ジェンキンスなど、ユーモラスな人間描写がこの作品を成功させている。
[櫻庭信之]
『長谷安生訳『ハンフリー・クリンカー』全2冊(1973・私家版)』
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