バイオ燃料(読み)バイオネンリョウ(英語表記)biofuel

翻訳|biofuel

デジタル大辞泉 「バイオ燃料」の意味・読み・例文・類語

バイオ‐ねんりょう〔‐ネンレウ〕【バイオ燃料】

バイオマス燃料

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイオ燃料」の意味・わかりやすい解説

バイオ燃料
ばいおねんりょう
biofuel

バイオマス由来の燃料。原料となる生物の生産と消費のバランスをとることにより、実質的に二酸化炭素排出がなくなるため、地球温暖化対策として脚光を浴びている。化石資源も生物由来ではあるが、生産と消費とのバランスが成立していないため、バイオ燃料に入らない。

 輸送用バイオマス燃料として小規模ながら国内外で実用化されているものは、バイオエタノール、バイオエチルターシャリーブチルエーテル(バイオETBE)、およびバイオディーゼルである。

 バイオエタノールサトウキビの糖類、またはトウモロコシや小麦のデンプンから微生物の働きにより製造されるエタノール(エチルアルコール)である。食料との競合が避けられず、食糧自給率のきわめて低い日本で大規模に実施することは困難であろう。食料との競合を避けるため、建築廃材、間伐材や製材所端材から得られる木材中のセルロースを化学処理により糖類に変換し、さらに糖類をアルコール発酵させてエタノールに変換することも試みられている。バイオエタノールはガソリンに添加して用いるか、バイオエタノール仕様エンジンの場合にはガソリン代替燃料として用いることができる。

 バイオETBEは、バイオエタノールと石油精製における副生成物であるイソブテンとの反応により製造される。オクタン価が高く、ガソリンに混合して用いられる。石油業界はバイオETBEを1%以上(1~8%)配合したガソリンをバイオガソリンとよび、その試験販売を首都圏50か所のガソリンスタンドで2007年(平成19)4月より始めた。2011年2月時点では、全国約2120か所のガソリンスタンドで販売されている。

 バイオディーゼル燃料BDF:bio diesel fuel)は自動車に搭載されているディーゼルエンジン用の燃料で、やし油菜種油、大豆油などの植物性油脂から製造される。植物性油脂はグリセリンの三脂肪酸エステルであり、通常沸点は軽油より高い500℃以上である。しかし、この油脂とメタノールメチルアルコール)を、水酸化ナトリウムを触媒として用いて反応させると、メタノールの脂肪酸エステルになり、沸点は軽油と同等になる。したがって、軽油に混合し用いることができる。やし油は熱帯地方でないと生産性が悪く、菜種油や大豆油などの食用油は食品と競合するため、日本で多量に生産することはむずかしい。やし油など安価な原料を輸入するか、少量であってもてんぷらの廃油などを原料にすれば実用化できる。

 以上のほかに、バイオマスを直接燃焼させて発電などを行うことがある。このような場合はバイオマス自体がバイオ燃料となる。薪(まき)や木炭の利用の場合も同様である。そのほかには、バイオマスをいったんガス化(合成ガスに変換)し、さらにフィッシャー‐トロプシュ法により液体燃料を製造することができる。しかし、合成ガスは天然ガスや石炭から製造するほうが、はるかに経済性がよいため実用化はされていない。

 バイオ燃料の利用は地球温暖化対策として小規模ながら実行されている。しかし、化石燃料と比べて経済的には不利であること、さらに地球環境や食糧事情に影響を与えずに、バイオマスを安価で大量にしかも安定的に供給することは、特殊な地域を除くとむずかしいことなどから、バイオ燃料の利用には限界があるであろう。

[難波征太郎]

『大聖泰弘・三井物産編『図解 バイオエタノール最前線』(2004・工業調査会)』『松村正利・サンケァフューエルス編『図解 バイオディーゼル最前線』(2006・工業調査会)』『山根浩二著『バイオディーゼル――天ぷら鍋から燃料タンクへ』改訂新装版(2007・東京図書出版会、リフレ出版発売)』『小泉達治著『バイオ燃料と国際食料需給――エネルギーと食料の「競合」を超えて』(2009・農林統計協会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイオ燃料」の意味・わかりやすい解説

バイオ燃料
バイオねんりょう
biofuel

バイオマス(植物素材や動物の死骸・糞尿)由来の燃料。生体原料は供給が容易なため,石油石炭天然ガスなどの化石燃料と異なり,再生可能なエネルギー源とみなされている。そのため石油をはじめとする化石燃料に代わる,費用効率が高く環境への負荷が小さい代替燃料といわれる。木材などいくつかのバイオ燃料は古来利用されている。直接燃焼させて熱を得ることができ,この熱で発電機を動かして電力を得ている。より需要の大きい燃料は液体バイオ燃料で,なかでも最も生産量が多いのは,砂糖デンプンを発酵させて得られるエタノール(→エチルアルコール)である。主要生産国はブラジルとアメリカ合衆国である。アメリカではトウモロコシを主原料としてエタノールを生産し,ガソリンにエタノールを 10%加えた混合燃料ガソホールを製造している。ブラジルではサトウキビを主原料とし,一般に 100%エタノール燃料または 85%エタノールの混合燃料として利用している。エタノールに次いで普及しているバイオ燃料は,大豆油やし油などの植物油をおもな原料とするバイオディーゼルである。廃食用油などの油脂を使うこともある。特にヨーロッパで普及し,通常は石油系ディーゼル燃料とさまざまな割合で混合されてディーゼルエンジンに使用されている。近年,セルロースの含有率が高い原料を使ったエタノールの生産技術の開発に注目が集まっている。セルロース系エタノールは,木材チップ,草木植物,穀物の残滓物,都市廃棄物などの豊富で安価な原料から生産することができる。一方でバイオ燃料は,精製工程を通じて経済的な負担と環境への影響をもたらすうえ,食糧生産に必要な広大な耕地を奪うという理由で,生産拡大に懸念を表明する論者も多い。

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知恵蔵 「バイオ燃料」の解説

バイオ燃料

トウモロコシ、サトウキビ、廃木材などの植物をアルコール発酵させたバイオエタノールと、ナタネ油やパーム油、廃食用油などで作るバイオディーゼル燃料(BDF)がある。植物は光合成で二酸化炭素を吸収することからバイオ燃料の燃焼時に発生する二酸化炭素はカウントしないと、京都議定書で決めており、有力な温暖化対策として米国、ブラジル、EU(欧州連合)では年間数百万〜2000万キロリットル(原油計算)の規模で普及している。日本政府は2010年に50万キロリットルの生産・利用目標を掲げているが、手探り状態。このままでは目標の10分の1にとどまりそうだ。石油連盟が音頭をとって、07年に首都圏の50のガソリンスタンドで、エタノールに石油精製副産物のイソブテンを混ぜた「ETBE」と呼ばれるバイオ燃料の販売を開始。08年から100店に拡大、12年に50万tのうち21万tを賄う。一方、環境省と大阪府は、バイオエタノール・ジャパン・関西会社(堺市)に、廃木材で作ったエタノール3%をガソリンに混ぜたE3の製造を依頼、府内で普及しようとしたが、石油連盟の協力が得られず、参加したスタンドは2店。北海道や新潟県では米や小麦を原料にする製造施設の建設が始まったが、全国での普及方法をめぐり政府の方針は定まらない。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2008年)

バイオ燃料

バイオマスを起源とする燃料。特に、ガソリンにバイオエタノール(サトウキビなど植物から作られるエタノール)を一定量混ぜたE3(エタノール3%)、E10(同10%)、E85(同85%)と呼ばれるエタノール燃料は、地球温暖化対策と同時に石油代替燃料となるため注目されている。エタノール燃料利用の進むブラジルでは、任意のエタノールの混合比率に対応したフレックス燃料自動車が急増しているほか、アメリカでは中西部等の諸州でも早くからE10が利用されている。また、EUでは、バイオ燃料指令(2003年)のもとで、スウェーデンなどが普及の先頭に立つ。なお日本では、環境省がE10を10年頃から流通させる方針である。

(飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「バイオ燃料」の意味・わかりやすい解説

バイオ燃料【バイオねんりょう】

バイオマス

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