バイカル湖(読み)バイカルこ(英語表記)Озеро Байкал/Ozero Baykal

精選版 日本国語大辞典 「バイカル湖」の意味・読み・例文・類語

バイカル‐こ【バイカル湖】

(バイカルはBajkal) ロシアの東シベリア南部にあるユーラシア大陸最大の淡水湖地溝帯にできた細長い湖で、表面積三万一五〇〇平方キロメートル。最大水深は一七四一メートルで世界第一。一二月末から五月の初めまでの間は結氷する。動植物が豊富で、太古から残存した固有種が一〇〇〇種にあまる。三三六の川が流入するが、エニセイ川支流アンガラ川が唯一の流出河川。

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デジタル大辞泉 「バイカル湖」の意味・読み・例文・類語

バイカル‐こ【バイカル湖】

Ozero BaykalОзеро Байкалロシア連邦、シベリア南部にある三日月形の淡水湖。世界一深い湖で、最大水深は約1620メートル。透明度も高い。面積3万1500平方キロメートル。冬は氷結する。約2500万年前に海溝が陸封されて淡水化したと考えられている。チョウザメ、オームリ(サケ科の一種)などが生息するほか、バイカルアザラシという世界で唯一の淡水性アザラシをはじめ固有種が多い。1996年に世界遺産自然遺産)に登録された。

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改訂新版 世界大百科事典 「バイカル湖」の意味・わかりやすい解説

バイカル[湖]
Ozero Baikal

ロシア連邦シベリア南部,ブリヤート共和国イルクーツク州にまたがる湖。チュルク語系の言葉で〈(獲物の)豊かな湖〉の意とされる。三日月状で長さ636km,最大幅79km,面積3万1500km2,湖面標高455m,最深点は湖面から1620m(1742m説もある)で,その位置はほぼ中央部にあたり,世界最深。水量は2万3000km3であり,透明度は40mを超える。湖岸線はおおむね単調で,両岸は切り立った崖が多く,湖面から比高約1500mの急斜面がそびえる部分もみられる。流入する300をこえる河川が湖岸に形成する三角州(とりわけセレンガ川のつくったものが最も著しい),雁行する西岸山脈の一部が湖面に沈んで島となったオリホン島,同じ原因で形成された島が東岸とつながって陸繫島となったスビャトイ・ノース岬の突出などが,湖岸線の単調さを破る。

 バイカル湖は北東~南西方向に発達した大きな地溝帯に沿って形成されたもので,3段の沈降が行われて水をたたえるに至った。また,この沈降は今も続いていると思われ,まれに地震も発生する。特徴ある湖盆形態は特異な地方風を発生させる。〈サルマsarma〉と呼ばれる風速40m/sの北西風が秋から初冬にかけて吹き,風下側の岸を5mもの波高をもつ高潮がおそう。春秋の季節に結氷しないときは湖面の水温が高く湖岸一帯の大気の冷却をさまたげるため,湖全体が一種のヒートアイランドを形成するので,湖岸はイルクーツク市よりも気温が10℃ほども高い。表面水温は最暖月(8月)で9~12℃(湖岸では20℃に上昇し,遊泳できる),1~5月には結氷する。

 湖は第三紀に海から切り離されたため,湖棲生物には多くの固有種が見られる。最も著名なものは淡水にすむバイカルアザラシ,胎生魚ゴレミャンカ(カジカの1種)である。オームリ(サケの1種),ハリウス(カワヒメマス類)などの漁獲もあるが,前者は数年間ごとの禁漁期間を設け急減を避けている。

 バイカル湖の水は西端に近いリストビャンカ村とバイカル市の間から,北西にアンガラ川となって流れ出る。リストビャンカ村にはロシア連邦科学アカデミーの湖沼学研究所,ボリショイ・コトにイルクーツク大学付属水棲生物研究所がおかれている。1969年に環境保護と自然の適正利用に関する特別法が制定された。おもな港は,バブシキン,バイカリスク,スリュジャンカなどである。

 バイカル湖は1620年代からロシア人に知られたと考えられる。多くの詩や民話を生んだが,特に老酋長バイカルと長女のアンガラの物語はよく知られ,湖尻近くにある巨岩はバイカル老人の投げたものとされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイカル湖」の意味・わかりやすい解説

バイカル湖
ばいかるこ
Озеро Байкал/Ozero Baykal

ロシア南東部、中央シベリアにあるユーラシア大陸最大の淡水湖。北東―南西方向に延びる三日月形をしており、長さ636キロメートル、最大幅79.4キロメートル。面積は3万1500平方キロメートルで、淡水湖としては世界第7位の広さをもつ。古第三紀末期に始まる正断層活動による地溝に生じた断層湖で、周辺は現在なお地震が多い。バイカル湖は雁行(がんこう)する三つの湖盆からなり、いずれも非常に深いが、とくに中央の湖盆は水面からの深さが1741メートルあり、これは湖としては世界最深である。湖面は標高455メートル、周囲の山脈は湖面上1500~2000メートル程度の高さがある。湖岸は一般に急斜面で、湖岸平野は狭い。セレンガ川をはじめ336の河川が流入するが、流出路は南西端に近いアンガラ川(エニセイ川の支流)だけである。湖内に27の島がある。

 湖の表面水温は夏季には9~12℃、湖岸では20℃に達する。1月から5月にかけて結氷し、氷厚70~115センチメートルに達するが、それでも沿岸の気候を和らげており、沿岸地域は周辺地域より10℃以上暖かい。湖水は鉱物質源に乏しく弱アルカリ性で、塩分濃度は1リットル中150ミリグラム以下である。透明度が高いことでも知られ、40.5メートルという1911年の観測値は世界歴代2位の記録である。陸地に閉じ込められたため淡水性となったアザラシなど、特有の生物が多く生息し、約1200種の動物種のうちバイカル湖固有の動物はその4分の3を占める。漁業が盛んで、サケ、マス、チョウザメ漁などが行われる。また木材、鉱石などの水上輸送路としても重要である。アンガラ川の流出口に位置するリストビャンカЛиствянка/Listvyankaに科学アカデミー湖沼学研究所があり南岸をシベリア鉄道が通る。なお、この湖は1996年に世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産)。

[熊木洋太]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイカル湖」の意味・わかりやすい解説

バイカル湖
バイカルこ
ozero Baykal

ロシア中東部,東シベリア南部にある大きな湖。ブリヤート共和国とイルクーツク州にまたがって北東-南西方向に延びる細長い湖で,長さ 636km。幅は平均 48km,最大 79.4km。周囲 2100km,面積 3万1500km2。世界最深の湖として知られ,最大水深は 1620m。水量は 2万3000km3に達する。地溝にできた構造盆地湖で,北西岸はプリモルスキー,バイカル,南東岸はバルグジン,ウーランブルガスイ,ハマルダバンなど急斜面の山脈に囲まれる。湖面標高 456m。湖に大小 336の河川が流入し,セレンガ,バルグジン,ベルフニャヤアンガラなど大きな川は河口に三角州を形成している。流出河川はアンガラ川のみで,湖の南西部北岸から北流してエニセイ川に合流する。湖中には多数の島があり,オリホン島,大ウシカニー島が大きい。世界で最も透明度の高い湖の一つで,最大透明度 40.5m。水温は低く,8月でも 10~12℃にすぎない。1~5月は結氷。動植物が豊富で,固有種の多いことで知られている。サケ類のオームリ,ハリウスの漁獲を中心に漁業も盛んである。湖上航路があり,木材流送も行なわれ,冬季には氷上道路が開通する。沿岸主要都市はスリュジャンカ,バイカリスク,バーブシキン。アンガラ川が流れ出る地点の東岸に位置する集落リストビャンカには科学アカデミーの湖沼学研究所がある。観光シーズンにはイルクーツクから訪れる観光客が多い。1996年世界遺産の自然遺産に登録。

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世界遺産詳解 「バイカル湖」の解説

バイカルこ【バイカル湖】

1996年に登録されたロシアの世界遺産(自然遺産)で、シベリア南東部、シベリア連邦管区のブリヤート共和国とイルクーツク州にまたがる湖。琵琶湖の約47倍にあたる3万1500km2の面積を持つ細長い湖で、その深度(1620m)と透明度は世界一とされる。また、2500万年前に誕生した世界最古の断層湖でもある。現在確認されているだけでも1500種の水生生物が生息し、そのうちの3分の2が固有種である。この中にはオームリやバイカルアザラシが含まれる。◇英名はLake Baikal

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