日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイバルス(1世)」の意味・わかりやすい解説
バイバルス(1世)
ばいばるす
Baybars Ⅰ
(1223―1277)
エジプトを中心としたバフリー・マムルーク朝の第5代スルタン(在位1260~77)。キプチャク出身のトルコ人奴隷で、アイユーブ朝に仕え、1250年マンスーラの戦いでフランスのルイ9世を捕らえて勇名をはせ、60年にはモンゴル軍をアイン・ジャールートの戦いで撃破したのち、マムルーク朝のスルタン、クトゥズを殺して即位した。17年間の治世に38回のシリア遠征を行い、対十字軍戦争では、アンティオキアなど諸都市を攻略し、十字軍を地中海沿岸に追い詰め、またイスマーイール派の要塞(ようさい)をはじめ、北はカエサリア(アナトリア半島中部)まで攻略し、南はヌビアに派兵した。アッバース朝カリフをカイロに擁立し、ヒジャーズ(アラビア半島の紅海沿岸)に勢力を伸長した。外交関係に力を入れると同時に、駅逓(えきてい)(バリード)の整備、港湾、城塞の建設など内政を整備し、マムルーク朝の基礎を築いた。彼の生涯は物語となり、広く西アジアで伝えられている。
[菊池忠純]
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