日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バウアー(Bruno Bauer)
ばうあー
Bruno Bauer
(1809―1882)
ドイツの哲学者。ベルリン大学で神学と哲学を修めたのち、同大学とボン大学で神学を講義。当初正統ヘーゲル主義者としてD・シュトラウス批判を行ったが、のちヘーゲル左派に転じ、無神論的立場から宗教批判を展開し、教授資格を奪われた。とくに、福音(ふくいん)は宗教的自意識の産物ないし文学作品と説いて注目される。1877年の『キリストとローマ皇帝』はマルクス主義思想やニーチェの宗教観に大きな影響を与えた。啓蒙(けいもう)思想やフランス革命やドイツの市民革命に関する歴史書も著す。政治的には三月革命後『クロイツ・ツァイトゥンク』紙に協力するなど保守派に接近した。
[末川 清 2015年3月19日]