バカガイ(読み)ばかがい(英語表記)Chinese surf clam

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バカガイ」の意味・わかりやすい解説

バカガイ
ばかがい / 馬鹿貝
Chinese surf clam
[学] Mactra chinensis

軟体動物門二枚貝綱バカガイ科の二枚貝。古名をミナトガイという。また従来、学名M. sulcatariaが用いられていた。日本全国のみならず樺太(からふと)(サハリン)、中国沿岸まで分布し、内湾の潮間帯から水深20メートルぐらいの細砂泥底に多い。概形ハマグリ形で、殻長85ミリメートル、殻高65ミリメートル、殻幅40ミリメートルに達し、殻はハマグリよりも薄く、殻表は光沢のある黄色の殻皮に覆われていて、成長肋(ろく)は粗い。殻の頂部から褐色の放射帯があるが、成長すると薄れる。殻の内面白色で、殻頂に向かってやや青みがかっている。蝶番(ちょうつがい)の歯の間には内靭帯(じんたい)があって両殻をつなぐ。軟体部は黄橙(こうとう)色で、足は細く長く、刺激を受けると水管から水を吹き出しながら足で跳躍する。産卵期は4~6月で、ときには大発生し、1平方メートルに最高1790個という資料がある。卵径はおよそ55マイクロメートル、D型幼生は殻長80マイクロメートル、殻高66マイクロメートルで、殻長0.16ミリメートルぐらいになると底生生活に入る。本種は桁網(けたあみ)などで採取され、食用とされる。主として生食され、俗にアオヤギとよばれるのは、かつてその有名な出荷地であり産地名の代表にされていた上総(かずさ)国青柳村(千葉県市原市)に由来している。また、閉殻筋貝柱)を、商品としては小柱(こばしら)とかあられという。

[奥谷喬司]

食品

バカガイは貝柱とむき身に分けて売られている。バカガイの貝柱は小柱(こばしら)といい、柔らかくて味は淡泊である。二つある貝柱は左右で大きさが異なる。大きいほうを大星(おおぼし)、小さいほうを小星(こぼし)という。これらは区別して売られている。酢の物、吸い物種(だね)、すし種、てんぷらなどに用いられる。むき身は赤みがかった色で細長く、味にややくせがある。すし種、酢の物、鍋物(なべもの)などに用いられる。

[河野友美]


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改訂新版 世界大百科事典 「バカガイ」の意味・わかりやすい解説

バカガイ (馬鹿貝)
surf clam
Mactra chinensis

バカガイ科の食用二枚貝。別名ミナトガイ。殻は長さ8.5cm,高さ6.5cm,膨らみ4cmに達し,丸みある三角形。やや薄質で灰白色。殻表の成長脈は前・後部でははっきりしている。黄褐色の皮で覆われる。また幼貝のときは放射状の淡褐色の色帯があるが,成長すると消える。しかし,北海道など北方では成貝でもそれが残り,この型をエゾバカガイM.c.carneopictaという。軟体は朱色で足は斧形。とると弱くて,死にやすく,殻をあけてこの足をだらりと出すので,これを馬鹿者が舌を出しているのに見たてて名づけられた。むき身をアオヤギ(青柳)というのは,昔上総国青柳村で多くとれたことに由来する。貝柱はとくに美味とされ,江戸のしり取り歌にも〈…うしろ向き,むきみはまぐり,馬鹿はしら,柱は二階…〉といわれている。乾製品のうちで,そのまま干したのを桜貝,足を細く引きのばしたのを姫貝という。サハリンから九州,朝鮮半島,中国沿岸まで広く分布し,内湾の潮間帯より水深20mの細砂底にすむ。産卵期は5~7月。殻長は3年で6.6cm,5年で9.7cmになる。採取時期は12月から翌年4月。春の季語。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バカガイ」の意味・わかりやすい解説

バカガイ
Mactra chinensis; Chinese trough clam; Chinese surf clam

軟体動物門二枚貝綱バカガイ科。俗にアオヤギともいう。殻長 8.5cm,殻高 6.5cm,殻幅 4.0cmに達する。殻は丸みのある三角形で,やや薄くもろい。殻表は成長脈が肋状に明らかであるが,幼貝では平滑で光沢があり,白色地に青褐色の斑がある。成長すると殻皮は黄褐色となり,薄い放射帯のあることが多い。地方によってはこの放射帯の明らかなものをエゾバカガイという。サハリン以南九州までと,朝鮮半島,中国に分布し,潮間帯より水深 20mの細砂泥にすむ。軟体は橙色で,足および貝柱を食用にする。産卵期は5~7月。採取期は 12月~4月。足を長く引伸ばした乾製品をヒメガイ,そのまま干したものをサクラガイという。むきみをアオヤギというのは,昔上総国 (千葉県) 青柳村で多くとれたことに由来する。

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百科事典マイペディア 「バカガイ」の意味・わかりやすい解説

バカガイ

ミナトガイとも。バカガイ科の二枚貝。高さ6.5cm,長さ8.5cm,幅4cm。殻はハマグリに似るが,薄手で黄褐色の殻皮でおおわれる。成長脈は殻頂の前後で明らか。サハリン,北海道〜九州,朝鮮半島,中国沿岸の内湾の潮間帯〜水深20m付近の細砂底にすむ。むき身を青柳(あおやぎ)といい,貝柱とともに,すし種,鍋物などに用い,干物にもする。
→関連項目アオヤギ(青柳)

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栄養・生化学辞典 「バカガイ」の解説

バカガイ

 [Mactra chinensis].ハマグリ目バカガイ属の二枚貝.広く日本沿岸でとれ,食用にする.俗にアオヤギといわれるのはこの貝.貝柱は小柱といい,これも食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のバカガイの言及

【貝柱】より

…二枚貝の殻を開閉する筋肉。たんに〈柱〉ともいい,タイラギ(タイラガイ),ホタテガイ,イタヤガイ,バカガイなどのものが美味である。タイラギのそれは最も大型で関東以南の市場で柱といえば,おおむねこれを指す。…

※「バカガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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