日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バリオス(Eduardo Barrios)
ばりおす
Eduardo Barrios
(1884―1963)
チリの小説家。軍人になるのを断念して、商人、山師、簿記係など職を転々とするが、晩年には文部大臣も務めた。異常心理に強い関心を示した自然主義作家で、心理の動きを克明に追求する作品が多い。母親の若い友人を恋するがその女性に愛人がいることを知って精神異常となる『恋に狂った少年』(1915)、厳格な軍人である父親の期待にそえず社会にも適応できず酒浸りになる青年を描く『落後者』(1917)、聖人の評判を得たものの肉欲との板挟みに悩む『愚かな修道士』(1922)、人間の心のうちに潜むさまざまな人格の闘いを描いた『1人の中の何人もの人間』(1950)などがある。
[安藤哲行]