ハルガヤ(読み)はるがや(英語表記)spring grass

改訂新版 世界大百科事典 「ハルガヤ」の意味・わかりやすい解説

ハルガヤ (春茅)
(sweet)vernalgrass
springgrass
Anthoxanthum odoratum L.

地中海地方原産のイネ科牧草の1種。多年草で,密に叢生(そうせい)して株をつくる。茎は細く,直立し,高さは30~80cm,3~5個の節がある。葉は根生および茎上生で,線状の披針形,長さは5~8cm,幅は2~5mm,鮮緑色で軟らかく,茎とともに無毛である。5~7月ごろ,茎の頂に長く抽出した花序を出す。花序は円錐形であるが,つまって,小穂を密生し,長楕円形の穂状に見え,長さは8~10cm,全体に緑色である。小穂は披針形で,長さ9mmくらい,2個の退化小花と1個の完全な小花とがあり,退化小花には毛と芒(のぎ)がある。全草にクマリンによる芳香があり,乾草に芳香を与えるのに利用される。ユーラシア大陸に広く分布し,北アメリカにも帰化している。日本へは明治の初めに牧草として輸入され,栽培されたが,逸出して草原帰化植物となり,北海道から九州に見られる。和名英名のバーナルグラスにちなむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルガヤ」の意味・わかりやすい解説

ハルガヤ
はるがや / 春茅
spring grass
[学] Anthoxanthum odoratum L.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は直立し、高さ20~50センチメートル。全体に多少開出毛がある。5~7月、分枝が短く、直立する穂状の円錐(えんすい)花序をつける。小穂は扁平(へんぺい)な披針(ひしん)形で長さ0.8~1センチメートル、黄褐色光沢がある。小花が3個あるが、下位の2小花は護穎(ごえい)だけからなり、褐色の長毛がある。上位の小花は無毛、稔性(ねんせい)で芒(のぎ)がある。ヨーロッパ、シベリア原産。草地に生え、北海道から九州にかけて帰化している。干し草にすると香気がある。名は英名スプリング・グラスの日本語訳。近縁種ミヤマハルガヤは植物体に毛がなく、下位の護穎は先端寄りの3分の1がほぼ無毛である。

[許 建 昌 2019年9月17日]


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世界大百科事典(旧版)内のハルガヤの言及

【ラテン・アメリカ文学】より

… 植民地的な遺制からの脱却の可能性を示すことによって,ラテン・アメリカの人々,とりわけ知識人らの精神を高揚させたキューバ革命の成功と符節を合わせたかのように,60年代の初めから次々に傑作,秀作と呼ぶべきものが発表されだした。アルゼンチンのペロン政権下の暗い時代の中での不条理な愛の葛藤を描いたサバトErnesto Sábato(1911‐ )の《英雄たちと墓》(1961),廃虚に等しい工場を舞台にして生の無意味を追究したウルグアイのオネッティの《造船所》(1961),フランス大革命のカリブ地域に及ぼした影響をたどったキューバのカルペンティエルの《光の世紀》(1962),メキシコ革命で成り上がった男の臨終の床の意識をなぞったフエンテスの《アルテミオ・クルスの死》(1962),実験的なスタイルで根なし草的な生を浮かび上がらせたアルゼンチンのコルターサルの《石蹴り遊び》(1963),ペルーの社会的現実を全体小説のかたちでとらえたバルガス・リョサの《緑の家》(1966)。そして,架空の町マコンドの創建と滅亡に仮託して新世界の歴史を描いたコロンビアのガルシア・マルケスの《百年の孤独》(1967)。…

※「ハルガヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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