日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バルト(Paul Barth)
ばると
Paul Barth
(1858―1922)
ドイツの哲学者、社会学者、教育学者。ライプツィヒ大学の哲学、教育学教授。哲学的には個別諸科学の成果を超えた、全存在者の統一的認識を志し、哲学、社会学、教育学の限界領域で学際的研究を行った。社会学的には、ヘーゲルの歴史哲学とランケの史学の間隙(かんげき)を埋めようとして、歴史を普遍的に考察する歴史哲学を社会学と同一視する「社会学としての歴史哲学」を構想した。そこで、コント、スペンサー、フーリエ、ウォード、ギディングス、マルクス、エンゲルスなどに批判的検討を加え、精神的有機体としての社会の精神的成長に期待を寄せた。教育学的にはヘルバルト派に属し、「知情意」3部門の成長という倫理学的目的をたて、それを心理学的方法によって基礎づけようとした。さらに全体としては、社会学を歴史哲学と規定しつつ、社会の継続性の要因を教育による統一意志の扶植とみて、社会学的精神史としての教育史に高い地位を与え、道徳教育にその実践的帰結をみいだした。著書に『社会学としての歴史哲学』Die Philosophie der Geschichte als Soziologie(1897)、『社会学的・思想史的視点からの教育史』Die Geschichte der Erziehung in soziologischer und geistesgeschichtlicher Beleuchtung(1911)などがある。
[徳永 恂]