バレンシア(英語表記)Valencia

翻訳|Valencia

精選版 日本国語大辞典 「バレンシア」の意味・読み・例文・類語

バレンシア

(Valencia)
[一] スペイン東部の港湾都市。地中海に面する。農産物の集散地で、ブドウ・オレンジなどを輸出。古くから絹織物・陶磁器工業が盛ん。ゴシック様式の建築物が多く、遺跡が多い。
[二] ベネズエラ北西部の都市。カラカスの西方、海岸山脈の高原盆地にある。一五五五年に建設され、一八一二~三〇年には首都となった。オレンジ・カカオ・コーヒー・綿花の集散地。

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デジタル大辞泉 「バレンシア」の意味・読み・例文・類語

バレンシア(Valencia)

スペイン中東部、地中海に面する商業都市。同名の自治州の州都。米・ブドウ・オレンジなどの集散地。絹織物や陶磁器工業も盛ん。歴史的建造物や遺跡が多い。人口、行政区81万(2008)。
ベネズエラ北部の都市。カラボボ州の州都。海岸山脈の山々に囲まれた高原盆地に位置する。同国第三の規模をもち、製造業、食品加工業などが盛んな工業都市として知られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「バレンシア」の意味・わかりやすい解説

バレンシア
Valencia

スペイン東部の地中海に面した地方País Valenciano。アリカンテカステリヨン,バレンシアの3県からなる。ほぼ中世のバレンシア王国の領域にあたり,バレンシアーノと呼ばれるカタルニャ語に似た独自の言語をもつ。背後にイベリア,ペニベティカ両山脈があり,トゥリア,フカル両川が潤す肥沃な平野では,集約農業が行なわれている。内陸の高地を除き,地中海式気候である。主産業は農業で,おもな産物は米のほか,オレンジなどの果物,内陸部ではブドウ,小麦を産する。また高地では,羊,ヤギの放牧が行われている。工業は,19世紀に製鉄,繊維が対外競争力を失ってから,食品加工,製紙,化学工業などが発達している。

 バレンシアはカルタゴ人,ローマ人の地中海植民地として発達した。5世紀から3世紀間,西ゴートの支配下におかれ,8世紀初頭にはイスラム教徒に征服されたが,イスラム教徒はローマ時代の灌漑施設を充実させ,農業を発展させた。1094年から1102年まで,エル・シッドによってキリスト教徒の手に一時戻るが,その後再びイスラムの支配下に入った。バレンシアが最終的にキリスト教徒に回復されるのは,1238年アラゴン王ハイメ1世のときである。こうしてバレンシアはアラゴン連合王国の一員となったが,アラゴン国王はバレンシア王国の自治を尊重し,同時にこの地方のモリスコに寛容な政策をとった。その結果,イスラム時代の灌漑農業は支障なく受け継がれ,また絹織物や農産物,工芸品などのバレンシアの特産品がアラゴン王国の地中海貿易に繰り込まれ,14世紀に最盛期を迎えるこの地方の経済的繁栄の基盤が整備された。

 15世紀には,カタルニャとイタリア・ルネサンスの影響を強く受け,詩人マルクAusiàs March(1397-1459)ら,数々の文化人を生んだ。16世紀には暴動が相次ぎ,1609年のモリスコの追放に発展した。この頃からバレンシアは経済的下降期に入っていった。18世紀初頭のスペイン継承戦争では,カタルニャとともにオーストリア大公側についたため,戦後それまで保持していた地方特権を失った。18世紀後半には工業の機械化を推進したが,フランス資本に敗れ,再び農業に活路を見いださなければならなくなった。1808年ナポレオン軍がイベリア半島に侵入すると,バレンシアは地方評議会をつくって抗戦したが,12年に降服した。19世紀から20世紀にかけての政治的混乱期には,グラオ港は地中海に面した港として,亡命者,反乱者の出港・上陸地点となった。そのため,プロヌンシアミエント(反乱)がしばしばこのバレンシアで起こった。スペイン内乱中は共和国政府を支持し,1936年10月,反乱軍が首都マドリードに迫ると,共和国政府の首都はバレンシアに移され,内乱の末期(1939)まで抗戦の拠点となった。1978年の新憲法のもとで地方自治権を獲得したが,カタルニャ地方との統合問題など懸案は多い。

 バレンシア地方の主都。バレンシア市は人口79万6549(2005)のスペイン第3の都市で,この地方の政治・経済の中心地であり,大司教座,バレンシア大学(1500創立)などを擁して,宗教・文化の中心でもある。グラオ港から農産物,工業製品が輸出される。古くはウァレンティアValentiaと呼ばれた。市内には,〈ミゲレーテ〉と呼ばれる八角形の鐘楼をもつ大聖堂,絹取引所(15~16世紀)をはじめとする歴史的建造物が多く,スペイン有数の絵画コレクションを有する県立美術館があり,3月19日のファーリャスの祭りとともに観光客を集めている。主産物の米を生かした料理パエリャが有名である。
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バレンシア
Valencia

ベネズエラ北部,カラボボ州の州都。人口133万8833(2000)。1555年に創設され,アシエンダの労働者のための穀物生産地域の中心都市であった。綿花,砂糖,タバコ,カカオなどの熱帯農産物の生産・集散地として発展し,1960年代以降,農地改革によって農業生産はさらに増大した。またバレンシア盆地は人口増加が顕著で,工業化も進み,化学製品,機械,農薬,木工,清涼飲料,食品加工業などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バレンシア」の意味・わかりやすい解説

バレンシア
Valencia

ベネズエラ北部,カラボボ州の州都。首都カラカスの西南西約 120km,海岸山脈中の盆地にあり,標高約 480m。バレンシア湖の西岸に近く,同湖に注ぐカブリアレス川にのぞむ。 1555年建設。同国の中心部カラカス地域と西部の油田地帯を結ぶ主要交通路に沿い,また南の牧牛地帯と肉牛の主要消費地帯である北部中央高地との連絡路にあたり,さらに北約 30kmのカリブ海沿岸には同国の主要港プエルトカベヨがあるという交通の要地を占めるため,近年急速に発展,現在カラカス,マラカイボに次ぐ同国第3の大都市となっている。同国で最も肥沃で生産性の高い農業地帯を背後に控え,各種農産物の取引を行うほか,同国有数の工業中心地で,飼料,肥料,酪農製品,植物油,石鹸,洗剤,医薬品,製紙,ゴム製品,繊維,衣料,製靴,セメント,家具,自動車部品,自動車組立てなどの工業が行われる。カラボボ大学 (1852) 所在地。カラカスとは鉄道,高速自動車道路で連絡。人口 95万 5005 (1990) 。

バレンシア
Valencia

スペイン東部のバレンシア自治州,バレンシア県の県都。地中海西部,バレンシア湾に臨むスペイン第3の都市。古代ギリシア人によって建設された古い町で,バレンシア王国の首都。キリスト教徒の手に戻った 13世紀からの長い平和の時代に隆盛をきわめ,芸術も栄えた。伝統的な絹織物,家具,陶器などの生産のほか,造船,金属,石油,化学工業が盛ん。気候は快適で,13~15世紀に建設された大聖堂のほか,国立陶器博物館,1441年創立の大学など 15世紀頃からの由緒ある建物が数多く残り,なかでも 1533年に完成した絹取引所 (ラ・ロンハ・デ・ラ・セダ) は,1996年世界遺産の文化遺産に登録された。毎年3月の火祭りは有名。人口 75万 2909 (1991推計) 。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「バレンシア」の解説

バレンシア
València[カタルニャ],Valencia[スペイン]

スペイン東部の沿岸地方。カタルニャ語バレンシア方言を固有言語とする。同名の港都はスペイン第3の都市。1238年アラゴン連合王国ハイメ1世が再征服し,18世紀初めまで独自の政体を維持。灌漑農業と絹織物業で栄えたが,17世紀モリスコの追放で経済的に一時大きく衰退した。19世紀には柑橘類や米の栽培を盛んにし,輸出作物地域となった。

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飲み物がわかる辞典 「バレンシア」の解説

バレンシア【Valencia】


カクテルの一種。アプリコットブランデー、オレンジジュース、オレンジビターズをシェークしてカクテルグラスに注ぐ。ショートドリンク。◇オレンジの産地として有名なスペインの都市名から。

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デジタル大辞泉プラス 「バレンシア」の解説

バレンシア

バラの園芸品種名。木立ち性、オレンジ色で花径が14~15センチの巨大輪の花をつける。四季咲き。作出国はドイツ。

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