バンケン(英語表記)Centropus; coucals

改訂新版 世界大百科事典 「バンケン」の意味・わかりやすい解説

バンケン (蕃鵑)
coucal

ホトトギス目ホトトギス科バンケン属Centropusの鳥の総称。27種が知られている。全長30~75cm。全体に褐色や黒のじみな羽色をしている。くちばしは太くてがんじょうで,先がかぎ状に曲がっている。脚も太くてがんじょうである。つばさは短くて丸く,尾はくさび状で長い。ほかのホトトギス類と同様に対趾足であしゆびが前後に2本ずつついている。アジア,アフリカ,オーストラリアなどに分布し,丈の高い草原や低木林にすんでいる。地面におりていることが多く,草の間や畑の昆虫,カエルトカゲ,カニ,ネズミなどをとらえて食べる。脚ががんじょうでつばさが短いのは,こうした草むらややぶの中での地上生活と関連している。ゴボゴボとかポコポコといった特徴的な声で鳴く。1年を通じて単独かつがいでくらしており,群れになることはあまりない。ホトトギス科に属しているが,この類は自分で巣をつくって雛をかえす。巣は球形で,草むらの地表付近につくり,出入口が側面にある。産座には緑色の葉を敷き,1腹3~5個の卵を産む。抱卵,育雛(いくすう)は雌雄交替で行う。

 普通種に,中国南部,南アジア大スンダ列島フィリピンなどの低木林や畑にすむ,ハシナガバンケンC.sinensis,アフリカのサバンナにすむセネガルバンケンC.senegalensis,オーストラリアのキジバンケンC.phasianinusなどがある。キジバンケンは,その名のとおり,形と羽色がキジ類によく似ている。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バンケン」の意味・わかりやすい解説

バンケン
Centropus; coucals

カッコウ目カッコウ科バンケン属の鳥の総称。約 28種からなる。全長 30~80cm。体は雄より雌の方が大きい。羽色は一般に黒ないし褐色を主色とし,尾は長く,と脚は強い。趾(あしゆび)が前後に 2本ずつ向けられる対趾足である。アフリカアジア熱帯亜熱帯オーストラリアに分布する。熱帯雨林や低木林のほか,草原や湿地,畑などにも生息する。大型の昆虫類,トカゲ,カエルなどを捕食するが,獲物をとる場所は樹上や地上など種によってさまざまである。カッコウの仲間だが,托卵習性はない。樹上や茂みの中に草や枝,葉などで球形の巣をつくり,3~5個の白色の卵を産む。繁殖における雌雄の役割は多くの鳥とは異なり,雄が巣づくりから育雛までのほとんどを行なう。ムナグロバンケン Centropus grillii は一妻多夫の配偶関係をもつことが知られている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バンケン」の意味・わかりやすい解説

バンケン
ばんけん / 蛮鵑
coucal

鳥綱ホトトギス目ホトトギス科バンケン属に含まれる鳥の総称。この属Centropusの仲間には27種がある。全長30~75センチメートル、ホトトギス科のなかでは大形で、全体に褐色や黒のじみな羽色をしているものが多い。体形は同じ科のカッコウやホトトギスに似ているが、足はより太くて頑丈である。アフリカ、アジア、オーストラリアなどに分布し、サバナの草やぶや沼沢地などにすんでいる。おもに地上で採食し、大形昆虫、トカゲ、カエルなどをとって食べる。托卵(たくらん)性の種はなく、草の中や地上に大きな球形の巣をつくって繁殖する。1腹卵数は3~5個、抱卵は雌雄ともに行う。いくつかの種では、第1卵目から抱卵が開始されるので、孵化(ふか)が不ぞろいになる。

[樋口広芳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android