パイオニア(株)(読み)ぱいおにあ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パイオニア(株)」の意味・わかりやすい解説

パイオニア(株)
ぱいおにあ

スピーカーなど音響・映像機器の老舗(しにせ)メーカー。経営不振のため2019年(平成31)香港の投資ファンドの完全子会社となった。

 実業家の松本望(のぞむ)(1905―1988)が1937年(昭和12)に高音質スピーカーの開発に成功し、翌1938年に設立したスピーカー製造の福音商会電機製作所が前身である。第二次世界大戦後の1947年(昭和22)福音電機として新発足。スピーカー技術をてこに、音響・映像会社としての地歩を築き、1961年にパイオニア社名変更した。1962年にセパレート型ステレオ、1981年にレーザーディスクプレーヤーを相次いで開発し、アンプ山水(さんすい)電気、チューナートリオ(現、JVCケンウッド)とともに「オーディオ御三家」とよばれた。創業40周年の1978年に総合エレクトロニクスメーカーへの脱皮を宣言。1990年(平成2)にGPS(全地球測位システム)を搭載したカーナビゲーション、1997年には家庭用プラズマテレビを世界で初めて開発するなど技術力には定評があった。しかし液晶テレビの普及楽曲の通信での提供といったデジタル化の流れに乗り遅れ、2009年(平成21)にプラズマテレビから撤退し、2015年には家庭用音響機器事業も売却し、カーナビゲーションなど車載事業での再建を目ざした。その後も割安な製品を提供するアジア企業の攻勢にさらされ、業績の不振が続き、2019年に香港ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアから1000億円余りの資金拠出を受け、同ファンドの傘下に入った。同年、1961年以来続けてきた東証上場も廃止した。本社は東京都文京区本駒込(ほんこまごめ)。連結従業員数約1万6800人(2018)、資本金928億円(2018)。売上高は3654億円(2018)とピーク時(2007、7971憶円)の半分以下で、2019年3月期まで3期連続で赤字

[矢野 武 2019年7月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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