ヒマワリ(読み)ひまわり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒマワリ」の意味・わかりやすい解説

ヒマワリ
ひまわり
[学] Helianthus

キク科(APG分類:キク科)ヒマワリ属の総称。一年草または多年草。普通、全株粗剛毛に覆われる。頭花は長花柄上に単生、またはまばらな散形花序をなす。北アメリカを中心に約160種知られ、花壇、切り花、または鉢植えにして観賞する。ヒマワリ(向日葵)sun flower/H. annuus L.は北アメリカ原産の不耐寒性一年草。英語名のサンフラワーの名でよばれることもあり、別名ニチリンソウ(日輪草)、ヒグルマ(日車)ともいう。茎は太くて単幹直立し、高さ1~3メートルに達する。茎上部を分枝し、先端に径10~40センチメートルの大輪花を開く。品種、変種が多く、八重咲きのサンゴールド、八重咲きで矮性(わいせい)種のイエローピグミー、切り花に多く用いられる太陽、黒竜などがある。観賞用のほか、採油用または家畜用飼料としても重要視される。生育は旺盛(おうせい)で、3~5月に苗床に播種(はしゅ)し、苗を育てて移植するか、4~5月に直播(じかま)きする。

 近年、学名ヘリアンサスの名でよく栽培されるコヒマワリヒメヒマワリH. debilis Nutt.はアメリカ、フロリダからテキサス原産の不耐寒性一年草。ヒマワリよりは小形で、高さ1~2メートル。7~9月、径6~8センチメートルの花を開く。花芯(かしん)は褐紫色で舌状花は黄色である。切り花、花壇用によい。栽培はヒマワリより容易で、日当りのよい所に30センチメートルの株間で4、5個ずつ直播きし、のちに間引く。庭植えは、1回摘芯(てきしん)する。

[魚躬詔一 2022年3月23日]

文化史

スペインの医師ニコラス・モナルデスによって1564~1571年の間に、新大陸からスペイン王立植物園にもたらされ、ヨーロッパに広がった。中国ではその半世紀後の『花史左編』(1616)に丈菊(じょうぎく)の名で初見する。日本にもその名で伝わり、『訓蒙図彙(きんもうずい)』(1666)には図とともに「丈菊、俗に言ふてんがいくわ(天蓋花)、一名迎陽花(げいようくわ)」の記述がある。貝原益軒(えきけん)は『花譜(かふ)』(1694)では、ひふがあふひ(日向葵)、かうじつあふひ(向日葵)の和名をあげるが、15年後の『大和本草(やまとほんぞう)』には「日マハリとも言ふ」と書いている。また伊藤三之丞の『花壇地錦抄(ちきんしょう)』(1695)にも日廻(ひまわ)りの名が出ている。したがって、元禄(げんろく)(1688~1704)のころにヒマワリの名は広がったらしい。その名は、太陽の動きに花がついて回るとみられたことからおこった。益軒は、『花譜』では花が「日に向ふ」としか記していないが、『大和本草』では「日につきて回る」と述べている。ヒマワリはつぼみの間は太陽の方向に花首を向け、夜の間に西から東に向きを変える。その運動は花弁が黄色く色づくころから鈍り、開花期後、多くは東を向いたまま動かなくなる。しかし同属のシロタエヒマワリH. argophyllus Torr. et A.Grayは、開花後も太陽の動きにつれて回転することが観察されている。

[湯浅浩史 2022年3月23日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヒマワリ」の意味・わかりやすい解説

ヒマワリ
sunflower
Helianthus annuus L.

夏に巨大な花が咲くキク科の一年草。ヒグルマ,ニチリンソウの名もある。中国名は向日葵。北アメリカ中・西部地方が原産地であるが,代表的な大型品種ロシアヒマワリは種子を油料,飼料にするために,旧ソ連地域諸国,インド,トルコ,メキシコなど各国で大栽培を行っている。茎は2~4mで直立し,心臓形の大きな葉を互生し,茎葉ともに粗毛がある。頭花は単生するもの,分枝して咲くものなどいろいろあるが,ロシアヒマワリは頭花の径が60cmに及ぶ。花の周辺は黄色の舌状花,内部の管状花は小さいが無数で,おしべ,めしべがあり,他家受粉して結実すると,花盤は下向きとなる。種子は大きく,ロシアヒマワリは白黒の条線があるが,他品種は黒色。観賞用の園芸品種には1茎多花のものがあるほか,舌状花が赤褐色のアカバナヒマワリ,切花用の花盤が黒色の黒竜(こくりゆう),太陽などがある。ヤエザキヒマワリは管状花の花弁も舌状化した万重咲きで,高性のサンゴールドSungoldと,草丈1mに足りない矮性(わいせい)のイェロー・ピグミーYellow Pygmyとがある。

 ヒマワリは短日性植物で,4月に種をまけば7~8月に草丈高く咲くが,遅まきは低く咲く。暖地や温室で1~2月にまけば4~5月に開花する。葉の蒸散量が多くしおれやすいので移植をせず,一般には直まきとする。他の草花をヒマワリの近辺に植えても養水分を奪われて発育がよくない。種子の含油量は約30%と多く,カロリーはダイズ油に劣らない。油料のほか飼料,菓子用あるいはセッケン材料として利用される。ヒマワリの花は太陽を追って回転すると俗にいわれるが,花は明るい方に向かって咲き,とくに若い茎は向日性が強い。

 別種のヒメヒマワリH.cucumerifolius Torr.et A.Grayは北アメリカ南東部地方原産の一年草で,茎に蛇紋があり,花は小さいが分枝が多く多花である。花壇用に春まきで夏に咲く。
執筆者: ヒマワリという日本語は,つねに顔を太陽に向けている花という意味であり,漢字の向日葵,フランス語のtournesolも同じ意味である。しかし,ヒマワリはいつも太陽に向かっているわけではないので,英語のsunflower(太陽の姿に似た花)という名のほうが適当である。原産地メキシコやペルーでは,ヒマワリの花が太陽神の象徴として祭壇などに刻まれた。なおゴッホのヒマワリの絵も,天空の太陽のイメージを豊かに取り込んだものといえる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ヒマワリ」の解説

ヒマワリ

 [Helianthus annuus].キク目キク科ヒマワリ属の植物で,種子を食用にしたり,油脂をとる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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