ヒメカゲロウ(読み)ひめかげろう

改訂新版 世界大百科事典 「ヒメカゲロウ」の意味・わかりやすい解説

ヒメカゲロウ (姫蜻蛉)
brown lacewing

脈翅目ヒメカゲロウ科Hemerobiidaeに属する昆虫総称。小型から中型で翅の開張5~35mm,全体に黄褐色ないし暗褐色を帯びる。極地を除いて世界中に広く分布し650種が記録され,日本にはヤマトヒメカゲロウHemerobius japonicus,チャバネヒメカゲロウEumicromus numerosusなど40種近くが産する。成虫は4~10月に種々の草木に発生し,もっぱら夜間に活動し,灯火に飛来する。科名はわずか1日の生命の意味であるが,実際の成虫の寿命は2ヵ月に及ぶ。卵は通常乳白色,ほぼ長楕円形で長径0.5~1.0mm。1匹の雌あたりの産卵数は数百個といわれ,葉や茎や樹皮などに1卵ずつまたは2~数卵をまとめて産みつける。幼虫は成熟すると5~10mmに達し,粗い網目状の繭を形成しその中でさなぎになる。温帯地域の夏季における発育日数は卵期が数日,幼虫期は十数日,繭期は十数日である。年間の発生回数は種によって異なるが,1~数世代である。幼虫も成虫もアブラムシカイガラムシなどの農林害虫を捕食する天敵で,かつてハワイでは生物的防除に利用された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメカゲロウ」の意味・わかりやすい解説

ヒメカゲロウ
ひめかげろう / 姫蜻蛉

昆虫綱脈翅(みゃくし)目ヒメカゲロウ科Hemerobiidaeの昆虫の総称。小形から中形で、触角数珠(じゅず)状、単眼を欠き、産卵管は突出しない脈翅類のグループ。はねはおおむね淡褐色で多毛。翅脈はむしろ粗雑であるが、前翅前縁部の横脈は分岐し、多数の小室をつくり、また第一径脈と径分脈とは先で癒合し、そこから支脈を生ずる。はねに縁紋はない。幼虫は食肉性で、アブラムシ、カイガラムシ、コナジラミハダニなどを捕食するので、有益な昆虫として重要である。幼虫は老熟すると、樹皮の下や割れ目に楕円(だえん)形の繭をつくる。成虫は灯火にも飛来する。日本には25種以上を産し、代表種は日本全土に分布するヤマトヒメカゲロウHemerobius japonicus、本州、九州にみられるエグリヒメカゲロウDerpanopteryx palaenoidesなどで、ヤマトヒメカゲロウとエグリヒメカゲロウの両種は夏季にみられる。

[山崎柄根]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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