ヒメネズミ(読み)ひめねずみ(英語表記)small Japanese field mouse

改訂新版 世界大百科事典 「ヒメネズミ」の意味・わかりやすい解説

ヒメネズミ (姫鼠)
Apodemus argenteus

北海道,本州,四国,九州の森林にすむ日本固有の尾の長い小型のノネズミ。齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。アカネズミに似るが,体は細くスマートで,前足,後足ともに小さく,体色は背面が美しい栗色,腹面は白色。体長7.5~10cm,尾長7.5~11cm,体重は15g前後。平地から高山まで,うっそうと茂る林床の暗い森に好んですみ,個体数は1ヘクタール当り20~30頭とかなり多い。高山帯のハイマツ林にもすむ。地上をおもな活動の場とするが,身軽で樹上にもよく登り,枝先になる種子をかじりとって採取する。食物はどんぐり,ハシバミ,ツリバナなどのおもに木の種子で,秋には種子を冬に備えて木の洞や地中に大量に貯蔵する。春にはかなりの量の昆虫も食べる。しばしば小鳥巣箱に営巣する。繁殖期は暖かな地方では春,秋の2回,寒い地方では夏1回。雌は1繁殖期に2~3回,1産2~6子,ふつう4~5子を産む。子は2週間で離乳する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメネズミ」の意味・わかりやすい解説

ヒメネズミ
ひめねずみ / 姫鼠
small Japanese field mouse
[学] Apodemus argenteus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。日本特産。北海道、本州、四国、九州のほか、利尻(りしり)島、佐渡島、粟(あわ)島、隠岐(おき)諸島対馬(つしま)、淡路(あわじ)島、金華山、種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)などにも分布している。頭胴長7.2~9.9センチメートル、尾長7.4~10.8センチメートル、体重約20グラム。低地から高山帯までの森林にすむが、亜高山帯に多い。森林が伐開されると、本種にかわって同属のアカネズミがすむようになる。春から秋に出産し1産2~8子。鳥の巣箱に入ることもある。また、山小屋に入ってくることもある。乳頭は4対。春から夏には昆虫類、夏には果実類、秋から冬には種子を多く食べる。貯食の習性をもつ。分布の全域にわたって、形態にほとんど地理的変異がみられないことは興味深い。

[宮尾嶽雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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