ヒライソガニ(読み)ひらいそがに

改訂新版 世界大百科事典 「ヒライソガニ」の意味・わかりやすい解説

ヒライソガニ (平磯蟹)
Gaetice depressus

十脚目イワガニ科の甲殻類。甲幅2.5cmくらい。北海道から沖縄まで,また,韓国や中国北部に分布し,岩礁にもっともふつうに見られるカニで,個体数が著しく多い。干潮時には小石の下に潜って過ごし,潮が満ちてくると活動を始める。小型の個体には一様に白色のものもいるが,成長とともに濃色となり,さまざまな程度に白斑が残る。じみな褐色ないし緑褐色に不規則な黄白色斑をもつ個体が多いが,一様に紫黒色の個体まで著しく色彩変異に富む。甲は丸みのある四角形で,額の直後に弱い隆起があるほかは名のように甲面が著しく平たい。甲の前側縁には眼窩(がんか)の後方に二つの切れ込みがあり,後側縁はほぼまっすぐである。雄では左右のはさみ脚の大きさが異なり,右が大きい個体が多い。大型個体では可動指と不動指の間に広い隙間が残っている。第3顎脚(がつきやく)の座節と長節が斜めに関接しているのが特徴。小さいものはクロダイ,大きいものはブダイ,イシダイ釣りの餌に使われる。沖縄に近縁種が1種いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒライソガニ」の意味・わかりやすい解説

ヒライソガニ
ひらいそがに / 平磯蟹
[学] Gaetice depressus

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目イワガニ科に属するカニ。甲幅2.5センチメートルに達する。北海道から九州、朝鮮半島、台湾、中国北部に分布し、小石のある磯(いそ)でもっとも普通にみられる。じみな暗褐色か紫褐色のものが多いが、幼個体ではほとんど白色のものもあり、成長につれていろいろな程度に白斑(はくはん)が残る。個体ごとに色が異なる状態であるが、形態的には安定していて、甲面は平たい板状、額(がく)は幅広い2葉、甲の前側縁には明瞭(めいりょう)な2歯と痕跡(こんせき)的な第3歯がある。雄のはさみ脚(あし)は左右で大きさが異なり、大形個体では両指の間に広いすきまが残る。両指の先端はわずかに馬蹄(ばてい)形にくぼむ。琉球(りゅうきゅう)諸島から近縁種が1種知られている。

武田正倫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒライソガニ」の意味・わかりやすい解説

ヒライソガニ
Gaetice depressus

軟甲綱十脚目モクズガニ科。甲幅 2.5cm。甲はほぼ四角形で,背面は平ら。甲の前側縁に 2歯と痕跡的な第3歯がある。幼個体は白色の甲をもち,成長するにつれてさまざまな程度に白色斑が残るという場合が多いが,一様に茶褐色,暗褐色,紫褐色の個体も多い。北海道から沖縄県,中国沿岸の潮間帯で最も普通に見られるカニである。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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