ビジネス・エンジェル(読み)びじねすえんじぇる(英語表記)business angel

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ビジネス・エンジェル
びじねすえんじぇる
business angel

創業間もないベンチャー・ビジネスに投資する個人投資家のこと。エンジェル投資家ともいう。ビジネス・エンジェルは、1980年代のアメリカやイギリスにおいて、創業期の中小企業、ベンチャー・ビジネスへの資金供給方法として融資ではなく投資が有効であると認識されるようになったことに乗じて成立、注目されるようになった。直訳すると「ビジネスの天使」だが、語源は、かつてミュージカルの制作に資金を提供した者をエンジェルとよんだことにちなむといわれる。実績に乏しい創業企業に対し、将来の可能性を買って投資する「天使」のような存在とみられたのであろう。実際のビジネス・エンジェルは成功した起業家が多く、「もうかる」投資先として中小企業を評価していた。
 日本では中小企業のオーナー経営者や資産家などが、投資先企業の将来の株式公開・上場によるキャピタル・ゲインの獲得を期待して投資する。一般社団法人日本エンジェルズ・フォーラムによれば、日本のビジネス・エンジェルの人数は約1万人、エンジェルによる投資額は年間約200億円といわれ、ベンチャー・ビジネスへの投資としては少額である。
 アメリカでは、ビジネス・エンジェルによる投資は、シード(起業準備)段階、スタートアップ(事業開始)段階のベンチャー・ビジネスの重要な資金供給源であり、ベンチャー・キャピタルが投資するまでの期間のつなぎ資金となっている。合衆国のビジネス・エンジェルは約23万4000人もいる。エンジェルによる投資額は、年間約2.5兆円であり、ベンチャー・キャピタルの年間投資額に匹敵する規模である。ただし、1件当たりの投資額は約4500万円であり、ベンチャー・キャピタルの投資額(約8億円)の20分の1程度である(以上は2006年のデータ)。合衆国のビジネス・エンジェルは、退職金運用の一環として専門の投資ファンドを通じてベンチャー・ビジネスに投資する「草の根エンジェル」をはじめ、成功して引退した元ベンチャー経営者、ビル・ゲイツのような富豪など、さまざまな立場の者がいる。元ベンチャー・ビジネスの経営者であるビジネス・エンジェルは、通常、投資だけではなく投資先に対する経営アドバイスも行うため、自分が知識を有する分野であり、かつ頻繁に訪問できる距離に立地するベンチャー・ビジネスに対して投資する。
 日本におけるビジネス・エンジェルは、アメリカに比べて人数も少なく、投資額も少額である。そのため、政府(経済産業省)は1997年(平成9)にエンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)を創設した。2009年には、さらに法改正が行われ、ベンチャー・ビジネスへの投資時点および株式譲渡時に、それぞれ投資額や株式譲渡損を所得税額から控除できるようになった。今般の制度改正により、日本政府はビジネス・エンジェルによる投資の増加に期待している。[鹿住倫世]
『リチャード・T・ハリソン、コリン・M・メイソン編著、西沢昭夫監訳『ビジネス・エンジェルの時代――起業家育成の新たな主役』(1997・東洋経済新報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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