ビデオ・アシスタント・レフェリー(読み)びでお・あしすたんと・れふぇりー(英語表記)Video Assistant Referee

知恵蔵の解説

ビデオ・アシスタント・レフェリー

サッカーの試合において、映像を見て判定を主審に助言するシステムとその審判員。試合に大きく影響する明らかな誤審や見逃しをなくす目的で、オフサイドを含めたゴールの成否、警告等の人違い、一発退場、ペナルティーキックで運用される。判定の最終決定権者は主審であり、映像でチェックする審判はあくまでも助言をするという立場から、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)と呼ばれる。
1986年に行われたワールドカップメキシコ大会準々決勝のアルゼンチン対イングランドの試合において、0対0で迎えた後半4分にアルゼンチンのディエゴ・マラドーナの手に触れたボールがゴールラインを越えた。正確にはハンドの反則であったが、審判はこれを見逃し、アルゼンチンにゴールを与えてしまった。試合は2対1でアルゼンチンが勝利し、マラドーナの得点は「神の手ゴール」と呼ばれて物議を醸した。この試合をはじめ、サッカーにおける誤審があるたびに、ビデオによる正確な判定を導入してはどうかという議論がなされてきた。
そんな中、世界に先駆けてオランダ・サッカー協会がビデオ判定システムを試験的に導入すると発表。2013-2014シーズンにスタジアム外のVARが内部と連絡を取らない形で技術テストを開始し、国際サッカー連盟(FIFA)と国際サッカー評議会(IFAB)に導入を提案する。IFABが2016年1月に公式戦でのテストを許可したことにより、2016-2017シーズンからオランダでは実際の試合でのテスト運用が始まった。これをきっかけにして、IFABはオランダの他にオーストラリア、ブラジル、ドイツ、ポルトガル、アメリカでも16年から技術テストを、17年からリアル運用を認めて、各国へ広がっている。日本のJリーグでは18年シーズンから技術テストが導入されるが、実際の運用はまだ行われない。
FIFAも16年に日本で開催されたクラブワールドカップからVARを試験的に行っており、12月14日に行われたFIFAクラブワールドカップジャパン2016の準決勝、鹿島アントラーズ(日本)対アトレチコ・ナシオナル(コロンビア)の試合で、FIFA主催大会では初めてVARによるペナルティーキックが与えられた。17年4月にFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、18年のロシア大会からワールドカップでもVARを導入すると語っている。
VARによって正確な判定が行われると評価される一方で、映像を見ていたVARからの助言により、主審が試合を止めてピッチサイドにある画面を見て最終的な判定を下すため、試合の流れが止まるという声がある。また主審がVAR頼みになって、重要な笛を吹かなくなるのではと危惧する声もある。

(場野守泰 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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