フィッシャー(Edmond H. Fischer)(読み)ふぃっしゃー(英語表記)Edmond H. Fischer

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フィッシャー(Edmond H. Fischer)
ふぃっしゃー
Edmond H. Fischer
(1920―2021)

アメリカの生化学者。中国の上海(シャンハイ)でスイス人の両親より生まれる。1939年スイスのジュネーブ大学入学。1947年同大学で化学の博士号を取得。1953年まで同大学で講師を勤める。酵素学を学ぶためにアメリカに拠点を移し、同年ワシントン大学助教授、1961年より同大学教授。1990年に名誉教授となる。

 学生時代にブタ膵臓(すいぞう)の酵素アミラーゼを精製、結晶化する。ワシントン大学に移ってすぐに、グリコーゲンの加リン酸分解酵素(フォスフォリラーゼ)についてE・クレブスとの共同研究を始める。彼らは、初めてフォスフォリラーゼを単離精製、結晶化することに成功した。さらに、筋肉組織でグリコーゲンからエネルギーを取り出す際には、フォスフォリラーゼがリン酸化を受けることが必要で、この酵素の機能がリン酸を着脱する2種類の酵素(リン酸化酵素と脱リン酸化酵素)により調節されていることを明らかにした。その後、多くの機能タンパク質がリン酸化、脱リン酸化機構によりその働きを制御されていることが明らかとなった。これらの功績により、クレブスとともに1992年のノーベル医学生理学賞を受賞した。

[馬場錬成 2018年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android