フェネチジン(読み)ふぇねちじん(英語表記)phenetidine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェネチジン」の意味・わかりやすい解説

フェネチジン
ふぇねちじん
phenetidine

芳香族アミンの一つ。エトキシアニリンともよばれる。化学式C2H5OC6H4NH2o(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-フェネチジンの3種の異性体が存在し、いずれも純粋なものは無色液体であるが、空気にさらしておくと赤褐色に着色する。水には不溶であるが、多くの有機溶媒にはよく溶ける。塩基性があるので薄い酸にもよく溶ける。3種の異性体のうちでp-異性体がもっとも重要である。

 p-フェネチジンは、以前には人工甘味料ズルチンの合成中間体として用いられていた。アゾ染料トリフェニルメタン系染料や医薬品の合成中間体としても重要であり、バナジウム定量分析試薬としても用いられている。

[廣田 穰 2015年7月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「フェネチジン」の解説

フェネチジン
フェネチジン
phenetidine

ethoxyaniline.C8H11NO(137.18).o-,m-,p-フェネチジンの3種類の異性体があり,それぞれ対応するニトロフェネトールを還元してつくられる.いずれも常温では液体.エタノール,希酸に可溶,水に不溶.空気中で褐色ないし赤褐色に着色する.染料の中間体.皮膚からの体内吸収には注意を要する.p-フェネチジンは医薬アセトフェネチジン,フェノコール,甘味剤ズルチンなどの中間物として使われる.λmax 237.5,303.5 nm(log ε 4.95,3.38).LD50 580 mg/kg(ラット経口).

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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