フェリンハ(読み)ふぇりんは(英語表記)Feringa, Bernard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェリンハ」の意味・わかりやすい解説

フェリンハ
ふぇりんは
Bernard Lucas Feringa
(1951―)

オランダの化学者。フェリンガとも表記される。ドレンテ州バーガー・コンパスカム出身。フローニンゲン大学卒業後、修士学位取得を経て、1978年同大学で博士号取得。1984年同大講師を経て1988年から同大教授。

 数ナノメートル(ナノは10億分の1)のサイズの分子機械の研究に取り組み、光学的に制御される分子スイッチを開発した。また1999年には、光や熱を当てると一方向に回転する分子モーターの開発に成功した。分子の軸の両側に回転する分子をつけると車の両輪のようになる。これを部品のように使って世界最小のナノカーをつくることに成功した(2011年四輪駆動のナノカーを完成)。この成功は、超小型ロボットなどの開発につながり、超細密分子デバイス、分子コンベヤーの実現なども期待されている。

 2004年スピノザ賞、2011年イギリス化学協会の有機立体化学賞、2013年名古屋金メダルなどを受賞した。2016年「分子機械の設計と合成を行った功績」によりイギリスの化学者フレーザーストッダート、フランスの化学者ジャンピエールソバージュノーベル化学賞を共同受賞した。

[馬場錬成 2017年3月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェリンハ」の意味・わかりやすい解説

フェリンハ
Feringa, Bernard

[生]1951.5.18. バルゲルコンパスクウム
オランダの化学者。フルネーム Bernard Lucas Feringa。1978年にフローニンゲン大学で博士号を取得し,ロイヤル・ダッチ・シェルの研究員などを経て,1984年フローニンゲン大学に講師として赴任,1988年教授となる。2004年同大学のヤコブス・ファントホフ記念特別教授。1983年にフランスの化学者ジャン=ピエール・ソバージュらのグループが成功した 2個のリング状分子が自由に動けるようにつながったカテナンの合成と,1991年にアメリカ合衆国の化学者 J.フレーザー・ストッダートらが開発した複合分子ロタキサンの特性を応用した「分子エレベータ」や「分子コンピュータ」をうけ,フェリンハらは 1999年,うちわ状分子 2個が炭素の二重結合の軸でつながった構造の分子をつくり,光をあてたり熱を加えたりすると,軸のまわりで一方の分子が決まった方向に回転し続ける「分子モータ」の開発に成功した。2011年には,骨格となる分子にこの分子モータを四つ取り付け,光や熱の刺激により金属面上を走る「ナノカー」をつくって「分子機械」の可能性を広げた。これらの功績により,2016年ソバージュ,ストッダートとともにノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞した。

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