フォン(民族)(読み)ふぉん(英語表記)Fon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォン(民族)」の意味・わかりやすい解説

フォン(民族)
ふぉん
Fon

西アフリカのベナン共和国(旧ダオメー)南部に居住するネグロイド系民族。人口約100万。コンゴコルドファンニジェール・コンゴ)語族クワ系諸語に属する言語フォン語を話す。ヤムイモキャッサバメイズなどを主作物とする農耕民である。社会は父系クラン氏族)を基盤とするが、17世紀にアボメーを首都とする王国(ダオメー王国)を形成、急速に勢力を拡大し、強大な帝国を築いた。その王は、アフリカの王権にはまれな、専制的権力をもち、すべての官吏の任命権を手中にしていた。この独裁的権力は、ヨーロッパとの奴隷交易による利益と、輸入された火器の独占によって支えられていた。フォンの宗教は、高度に階級分化の進んだ社会に応じて、系譜関係や役割によって階層化された多数の神々の信仰を中核とする。この神々の名称や性格、祭祀(さいし)は、東に境を接する民族集団ヨルバのそれと共通のものが多い。

[渡部重行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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