フォード(John Ford(1586ころ―1640ころ))(読み)ふぉーど(英語表記)John Ford

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フォード(John Ford(1586ころ―1640ころ))
ふぉーど
John Ford
(1586ころ―1640ころ)

イギリスの劇作家。法学院ミドル・テンプルに学んだ事実のほか、生涯については未詳。1610年ごろから他の劇作家たちとの共作で生計の資を得たと考えられる。独自の作品は悲喜劇『恋人の憂愁』(1628初演、以下同じ)、恐怖悲劇の傑作『はり裂けた胸』(1629ころ)、近親相姦(そうかん)の悲劇『あわれ彼女娼婦(しょうふ)』、『愛のいけにえ』(ともに1632ころ)など。いずれもエリザベス朝末期のデカダンス色が濃い。彼の悲劇は愛をテーマとしているが、激しい情念が自然に燃え上がるのではなく、劇全体を支配するのは沈鬱(ちんうつ)な哀愁のムードであり、血と暴力と乱倫というセンセーショナルな道具立てとは裏腹の沈思と沈黙こそが、ドラマの核となっている。また、史劇『パーキン・ウォーベック』(1633ころ)は、ある王位僭称者(せんしょうしゃ)の誇大妄想を衝(つ)き、人間の偉大性を問う異色作。史劇に新機軸をもたらした作品として注目される。

笹山 隆]

『小田島雄志訳『あわれ彼女は娼婦』(『世界文学大系89 古典劇集』所収・1963・筑摩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android