フクロギツネ(読み)ふくろぎつね(英語表記)brush-tailed possum

改訂新版 世界大百科事典 「フクロギツネ」の意味・わかりやすい解説

フクロギツネ (袋狐)
common brushtailed possum
Trichosurus vulpecula

三角形の耳をもつ頭部と,ふさふさした毛の生える太い尾がキツネに似た,樹上生の有袋目クスクス科の哺乳類。体長45~62cm,尾長27~38cm。毛は厚く羊毛状で,良質。灰色,赤茶色,黒褐色と毛色にはさまざまなタイプがあり,かつては婦人用の毛皮獣として年間数十万頭の規模で大量に狩られた。育児囊には2~4個の乳頭がある。木の実,花,葉などのほか,昆虫,小動物も食べる雑食性で,その生態は,キツネというよりはリスに近い。オーストラリアとタスマニアに分布し,ごくふつうに見られる。ニュージーランドには移入されたものが野生化して増殖している。砂漠を除くあらゆる環境にすむが,とくに森林に多く,木の洞を巣として,夜間おもに樹上で活動する。しかし,川岸ウサギの穴や低木茂み,人家の屋根裏などを巣として地上で活動することもでき,きわめて適応力に富む。出産はふつう年1回,5~6月に行われ,1産1~2子。子は9月ころ育児囊を出て,11月には独立する。
有袋類
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロギツネ」の意味・わかりやすい解説

フクロギツネ
ふくろぎつね
brush-tailed possum
[学] Trichosurus vulpecula

哺乳(ほにゅう)綱有袋目クスクス科の動物。フクロリスともよばれる。オーストラリア、タスマニア島と周辺の島に分布し、またニュージーランドでは移入されたものが野生化している。頭胴長45~60センチメートル、尾長27~38センチメートル、体重1.5~5キログラム。顔はキツネに似て、耳介は狭く長い。尾は太く円筒形で、キツネの尾に似る。体毛は羊毛状で、体色は銀灰色から黒色、茶色、ときには白色のものまであり変化に富む。雌には育児嚢(のう)があり、乳頭は2~4個ある。おもに森林にすむが、木のない平原にもすみ、また都市近郊にすんで人家の軒を隠れ家にすることもある。夜行性で、昼間は樹上の隠れ家で休息する。おもに木の葉、木の実、花などを食べるが、鳥の卵や雛(ひな)なども食べる。妊娠期間は16日で、普通1産1子で、まれに2子。子は3か月ぐらい育児嚢内で育てられる。寿命は10年ぐらいである。

[中里竜二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android