フクログモ(読み)ふくろぐも

改訂新版 世界大百科事典 「フクログモ」の意味・わかりやすい解説

フクログモ (袋蜘蛛)
sac spider

クモ目フクログモ科フクログモ属Clubionaに属する蛛形(ちゆけい)類の総称。世界中に広く分布しており,体長は5~20mm。網を張らずに地上や草間,樹枝葉上を夜間歩き回り,小昆虫を捕食する。多くの種が葉をつづって産室をつくり,中にこもって卵囊を保護するが,樹皮,倒木,石などの下に産室をつくる種類もいる。樹皮下や落葉中に糸で住居をつくり,その中で越冬する。本属のクモは,形,色彩ともに似た種類が多く,同定の困難なグループの一つであり,世界で700種あまり,日本でハマキフクログモ,ムナアカフクログモなど約50種が知られている。近縁種カバキコマチグモChiracanthium japonicumは性質が荒いことで知られているが,母グモは産室の中で,子グモの餌として自分の体を提供する。ススキの葉を折りまげて産室をつくることが多い。なお本科は,ヒメグモ科,サラグモ科,コガネグモ科,カニグモ科,ハエトリグモ科,ワシグモ科などと同様,アリその他の昆虫への擬態を示す特殊化した種類を含んでいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクログモ」の意味・わかりやすい解説

フクログモ
ふくろぐも / 袋蜘蛛

節足動物門クモ形綱真正クモ目フクログモ科のクモの総称。狭義にはフクログモ属をさす。草原、畔(あぜ)、山地にかけて多くみられる。木や草の葉を折り曲げて住居をつくる。種類が多いが、ほとんどが黄色で、目だった形態や斑紋(はんもん)をもつものが少ないので、外見上の区別はむずかしい。代表的なものは水田に多いハマキフクログモで、イネの葉を三つに折り曲げてその中にすむ。樹木の樹皮の間などにいる腹部に数対の褐色斑のあるムナアカフクログモ、草間にみられる矢筈(やはず)斑をもつ褐色のヤハズフクログモなどは普通にみられる種である。

 同じ科のコマチグモ属のカバキコマチグモは、ススキの葉を折り曲げているものが多い。このクモは、毒性のやや強いこと、子グモが母グモの体を食って育つことで有名である。山地には広葉樹の葉を巻くアシナガコマチグモがいる。

[八木沼健夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクログモ」の意味・わかりやすい解説

フクログモ
Clubionidae; sac spider

クモ綱クモ目フクログモ科に属する種類の総称。狭義にはフクログモ属 Clubionaの総称。体長 0.2~1.5cmで,体は黄褐色。徘徊性。木や草の葉を折り曲げて住居兼産室をつくるものが多い。本科の日本産種は約 50種で,代表種にハマキフクログモ C. japonicolaやヒメフクログモ C. kurilensisなどがある。前種は水田,草原にごく普通で,イネ科植物の葉を三つ折りにして産室をつくる。後種は広葉樹の葉を利用する。近縁カバキコマチグモも同様の習性をもつ。 (→クモ類 )

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