フコース(読み)ふこーす(英語表記)fucose

デジタル大辞泉 「フコース」の意味・読み・例文・類語

フコース(fucose)

炭素数6のデオキシ糖一種天然にはD型とL型動植物に広く存在する。名称は、L-フコースが海藻粘り気の成分フコイダン中に発見されたことに由来する。化学式C6H12O5

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フコース」の意味・わかりやすい解説

フコース
ふこーす
fucose

炭素数6のデオキシ糖の一種。デオキシ糖とは糖のヒドロキシ基(-OH)が水素(-H)に置換された化合物の総称である。フコースは6-デオキシガラクトース6-deoxygalactose、ガラクトメチロースgalactomethylose、ロデオースrhodeoseともいい、ガラクトースの6番目(アルデヒド基の炭素を1番目とする)の炭素についているヒドロキシ基が水素に置換された構造をもつ。組成式はC6H12O5。分子量は164.16。単糖にはカルボニル基(アルデヒド基およびケトン基)を上方に書いたとき、下から2番目の炭素のヒドロキシ基が右方についたD型と、左方についたL型とがある。一般に天然に存する糖の多くはD型であるが、天然のフコースにはD型とL型の両方がある。

 D-フコースはヒルガオ科植物の配糖体の糖として存在。アルコールから結晶化するとα(アルファ)型が得られる。融点は144℃。比旋光度[α] +127.0(7分)→+89.4°(31分)→+77.2°(71分)→+76.0°(最終値146分、c=10。cは旋光度を測定したときの濃度で、10g/100mlで測定したことを示す)(『メルクインデックス 13版』The Merck Index, 13th Edition)。甘味がある。

 L-フコースは海藻、ウニカエルの卵に多糖類として存在。また、生体内における種々の糖タンパク質糖脂質の糖鎖の、主として非還元末端基として広く生物界に分布している。糖タンパク質の糖鎖部分は免疫学的、血清学的に重要な役割を果たしている。遊離のL-フコースはコンブの多糖フコイジンを原料として精製される。無水アルコールから結晶化するとα型が得られる。融点は140℃。比旋光度[α] -124.1(10分)→-108.0°(20分)→-91.5°(36分)→-75.6°(最終値24時間、c=9)。

[徳久幸子]

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化学辞典 第2版 「フコース」の解説

フコース
フコース
fucose

6-deoxygalactose.C6H12O5(164.16).デオキシ糖の一種.L-フコースは多糖類(海草細胞壁,血液型多糖類など)や人乳のオリゴ糖類などの構成成分である.水中での組成は,α-ピラノース28%,β-ピラノース67%,フラノース5%,直鎖アルデヒド0.01% となる.α-アノマーは融点145 ℃.-124.1→-76.4°(水).D-フコースはヒルガオ科Tubera jalapaeの根にある配糖体コンボルブリン(convolvulin)などの糖成分である.融点140~143 ℃.+89→+75.7°(水).[CAS 3615-37-0:D-フコース]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「フコース」の解説

フコース

 C6H12O5 (mw164.16).

 広く生物界に存在する糖.多糖の非還元末端にある場合が多い.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のフコースの言及

【単糖】より

…天然に見いだされる糖はほとんどすべてがD‐型のものである。ただし,フコースfucose(6‐デオキシガラクトース)はL‐型が天然のものである。 単糖は含まれる炭素原子の数によって,二炭糖(ジオース),三炭糖(トリオース),四炭糖(テトロース),五炭糖(ペントース),六炭糖(ヘキソース),七炭糖(ヘプトース)というように分けられる。…

※「フコース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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