日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランク(Johann Peter Frank)
ふらんく
Johann Peter Frank
(1745―1821)
ドイツの医学者。近代公衆衛生学の建設者とされる。ラインラント・プファルツの小村ロータルベンに生まれ、1766年ハイデルベルク大学を卒業。以後、開業して臨床経験を積み、宮廷医などもしながら著述を行った。1779年、『完全な医事警察の体系』System einer vollständigen medizinischen Polizeiの第1巻を刊行、最終の第6巻は1817年に発刊され、その補巻3巻が1822、1825、1827年にそれぞれ刊行された。その内容は、結婚・妊娠・出産から児童福祉、衣食住と環境衛生、人口問題や病院、性病など、公衆衛生に関する広範囲な問題を扱っており、人々の健康は公的な機関によって維持されるという思想を、豊かな知識と実践経験に基づいて展開している。この著作によって名声を得た彼は、ゲッティンゲン(1784)、パビーア(1786)、ウィーン(1795)の大学教授を歴任、1804年にはロシア皇帝侍医に任ぜられた。
[大鳥蘭三郎]