フランシス(Dick Francis)(読み)ふらんしす(英語表記)Dick Francis

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フランシス(Dick Francis)
ふらんしす
Dick Francis
(1920―2010)

イギリスの小説家。ウェールズ生まれ。わずか8歳で馬術競技会で優勝する。祖父はアマチュアの騎手、父はプロの騎手だった。第二次世界大戦では、空軍に入隊し、1946年に除隊すると、アマチュアの障害レース騎手になり、1948年にはプロに転向する。1953年から1954年にかけて障害レースの全英チャンピオンとなる。1957年に引退し、新聞社の競馬担当記者となった。同年、自伝『女王陛下の騎手』を発表。1962年、騎手時代の経験を生かして書かれたミステリー本命』が大ヒットした。以後、『度胸』(1964)、『興奮』『大穴』(ともに1965)など、ほぼ年1作ずつ作品を刊行し続ける。作品はいずれも競馬を題材にしておりながら、背景、事件、テーマなどそれぞれに趣向がこらされ、加えて誇り高くストイックな主人公によるスリリングな活躍が描かれている。そのほか、名騎手レスター・ピゴットLester Keith Piggott(1935―2022)の伝記なども執筆している。また、『罰金』(1968)でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)長編賞を受賞した。さらに『大穴』の片腕調査員シド・ハレーが再登場した『利腕』(1979)では、MWA長編賞、CWA(イギリス推理作家協会)ゴールド・ダガー賞を受賞し、三度ハレーが登場する『敵手』(1995)もまたMWA長編賞を受賞した。1973年から1974年には、CWA会長を務め、またその功績により、1989年にCWAダイヤモンド・ダガー賞、1996年にMWA巨匠賞を受賞している。世界各国で翻訳されており、日本での人気も高く、独自に編纂(へんさん)されたブックガイド『ディック・フランシス読本』が刊行されている。

吉野 仁]

『菊池光訳『女王陛下の騎手』『本命』『度胸』『興奮』『大穴』『罰金』『利腕』『敵手』(ハヤカワ・ミステリ文庫)』『早川書房編集部編『ディック・フランシス読本』(1992・早川書房)』

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