日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランス料理/おもな料理用語
ふらんすりょうりおもなりょうりようご
フランス料理にかかわる用語のうち、わが国で比較的よく使われているものを中心に選んで五十音順に掲げた。
*印、→印は別に本項目があることを示す。
アペリチフ apéritif
食前に食欲を増すために飲む酒。ワイン系(シャンパンなど)とスピリッツ系(リキュール)に大別される。→食前酒
ア・ラ・カルト à la carte
メニューから好みの料理を注文する食事のことで、一品だけ食べるという意味ではない。フランスの料理店では定食は少なく、この方法の食事が多い。
アントルメ* entremets
食事の終わりに出されるデザート。冷菓(アイスクリームなど)と温菓(スフレなど)の2種類がある。
アントレ* entrée
西洋料理で魚料理とローストの間に出る肉料理。フランス語で「入る」の意から、最初は序の料理をさした。アントレの本流はソース付きの技巧派料理。
エスカルゴ* escargot
食用カタツムリ。ブルゴーニュ産が有名だが、現在は養殖もの。
エスカロープ escalope
薄切り肉のこと。料理名の頭にescalopes de veau…のようにエスカロープをつける。子牛肉をよく使う。
オードブル* hors-d'œuvre
食事の前に食前酒とともに供される小品料理で、前菜ともいう。冷前菜(チーズ、キャビアなど)、温前菜(コキーユ、クロケットなど)に大別できる。
カナッペ* canapé
オードブルで、パンの薄切りやクラッカーに食品をのせてつくる。語源はフランス語の長椅子(いす)。
ガランティン* galantine
肉に詰め物(レバー、野菜、ナッツなど)を入れて巻き、ゼラチン質のだし汁で煮た料理。冷まして輪切りにするとgalant(優美)なのでこの名がある。
ガルニチュール garniture
西洋料理の付け合せのこと。野菜、麺(めん)類、いも類が使われる。略してガルニとよぶことが多い。
カルバドス* calvados
フランスのノルマンディー地方でつくるりんご酒のブランデー。
クネル* quenelles
肉や魚をつぶし、パン粉や卵を加えて成形し、焼くか蒸すかしたもの。スープの浮き身やパイの中身などに使う。
グラッセ glacé
バター、砂糖、塩入り煮汁でニンジンなどをつや煮したもの。また、菓子の表面に糖衣をつけたものもいい、焼き色をつけるだけの操作もいう。→マロングラッセ
グリエ griller
肉や魚貝、野菜などを網焼きにすること。材料に焼き目をつけるのが特徴で、普通、溝のついた鉄板を使う。→グリル
クルトン* croûton
食パンを揚げたもの。賽(さい)の目(め)切りはスープの浮き身、丸い大形クルトンはステーキの下敷きにする。
クールブイヨン* court-bouillon
芳香野菜、その他を使って短い(クール)時間でつくるだし汁。魚をゆでるときに用いる。
クレープ crêpe
小麦粉に牛乳、卵、バター、砂糖を加え薄く焼いた菓子。クレープ・シュゼットは豪華デザートとして知られるが、本来ブルターニュではそば粉製の軽食であった。
コキーユ coquille
ホタテガイの貝殻に盛った料理の総称(英語ではコキール)。コキーユは貝殻の意だが、陶器を用いることも多い。グラタン風につくる魚貝コキーユのほかに、冷製もある。→コキール
コンソメ* consommé
西洋料理の澄んだスープ。ブイヨンに肉と野菜、卵白を加えて時間をかけて煮だし、透明に仕上げる。
シュークルート choucroute
キャベツの塩漬けを発酵させたもので、アルザス地方の特産。これと豚肉を白ワインで煮込んだ料理のこともシュークルートとよび、典型的家庭料理。→ザウアークラウト
ショー・フロワ chaud-froid
ショーは熱い、フロワは冷たいの意。調理後冷ました肉、魚貝、卵などにゼラチン入りソース(ショー・フロワソース)をかける。オリーブ、トリュフなどで飾り、ゼリーを流すと豪華になる。
スフレ* soufflé
卵白を泡立ててつくった菓子や料理のこと。チョコレート・スフレや、料理ではサーモン・スフレが代表的。〉
ゼリー* gelée
ゼラチンや寒天で固めた冷菓や料理の総称。果汁やワインは冷菓に、カニやエビはゼリー寄せとして料理に利用する。
ソルベ sorbet
氷菓の一種。日本では一般にシャーベットといっている。→シャーベット
タルト* tarte
小麦粉とバターでつくった生地(きじ)をタルト皿に敷き、中身を詰めて焼いたもの。ロレーヌ風キッシュ(ベーコン入り)に代表される料理と、菓子のタルトがある。
テリーヌ* terrine
元来は陶製の深い器を意味するが、一般にはその器に詰めて蒸し焼きにしたパテ料理をさす。
トリュフ* truffe
キノコの一種。南仏ペリゴール地方産が高級。野鳥料理などに添えられ、フォアグラのパテに入れるのは有名。
ヌーベル・キュイジーヌ nouvelle cuisine
「新しい料理」の意。1970年代に大流行した。担い手の一人ポール・ボキューズは何度も来日し、日本料理の盛付けや刺身をヒントに、フランス料理の単純化に成功した。
パテ pâté
小麦粉とバターで生地(きじ)をつくり、中身を入れて焼いたもの。英語ではパイという。菓子パイと料理のパイがある。→パイ
ババロア* bavarois
牛乳、卵、砂糖、生クリーム、香料をゼラチンで固めた冷菓。
ビュッフェ* buffet
立食のこと。語源はフランス語の食器戸棚から。
ピューレ* purée
肉、魚、野菜をすりつぶして裏漉(うらご)し、濃度をつけたもの。
ファルシー farcie
詰め物料理で、英語ではスタッフド。トマトファルシー、卵ファルシーなどがある。
ブイヤベース* bouillabaisse
南仏プロバンス地方の名物料理。魚貝類に野菜、香辛料を加えたスープ煮の鍋(なべ)料理である。
ブイヨン* bouillon
野菜、肉、骨、魚、貝などの煮だし汁のこと。スープやソースのもとになる西洋料理の重要な基本材料の一つ。
フォアグラ* foie gras
肥育したガチョウの肝臓。キャビア、トリュフとともに世界の三大珍味とされる。テリーヌ、パイなどに使う。
フォン* fonds
ソースをつくるときのだし汁で、ブイヨンより濃厚。鶏、魚からとる白いフォンと、肉や骨からの鳶(とび)色のフォンがある。
フォンダン* fondant
ケーキやクッキーの装飾に用いる砂糖衣(ごろも)。砂糖水を煮沸して冷却させ、攪拌(かくはん)して純白に仕上げたもの。
フォンデュ* fondue
フォンデュは「溶けた」の意。パンを溶かしたチーズにからめて食べるチーズ・フォンデュ(スイス料理)と、串(くし)刺し牛肉を油で揚げながら食べるフォンデュ・ブルギニョン(フランス料理)がある。
ブーケガルニ* bouquet garni
香草を束ねたもの。セロリやパセリの茎、タイム、ローレルなどを束ねて、煮込み料理に使う。
ブランシール blanchir
あくや余分なにおいなどを抜くために、材料をまえもってゆでること。サヤインゲンなど火の通りにくい野菜はあらかじめゆでて、調理しやすくするのをいう。
ブラン・マンジェ* blanc-manger
「白い食べ物」の意で、冷たいデザート。アーモンドミルクをゼラチンで固めて冷やす。
フリカッセ* fricassée
肉や貝類を白ソースで煮込んだ料理。代表はチキンフリカッセ。
フリール frire
高温の油で衣(ころも)をつけた材料を揚げる調理。小麦粉だけつけるから揚げ、パン粉を用いる英国風揚げ物、泡立てた卵白を加えるベニュエ(フリッター)がある。→フライ
ブールコンポーゼ* beurres composés
合わせバターのこと。パセリバター、アンチョビーバターなど、料理飾りやカナッペにする。
ブレゼ* braiser
肉や魚を少量の液体で蒸し煮にする料理法をいう。ヒラメの白ワイン蒸しや、牛肉のシャンパン蒸しなどがある。
ポシェ pocher
湯煮すること。単なる塩ゆでも含まれるが、素材の種類によってだし汁を使い分けて湯煮し、味を引き立てる調理法。
ポタージュ* potage
フランス語ではスープの意。一般には濃度のあるスープをさす。
ポワレ poêler
蒸し焼きのこと。鍋(なべ)に野菜を敷き、肉(子牛、鶏など)を入れて密封し、液体を使わずにオーブンで蒸し焼きにする。
マトロート* matelote
ワインを使った煮込み料理。川魚を煮込むことが多く、淡水魚のマトロート、ウナギのマトロートなどが有名。
マリネー* mariné
酢に香辛料やサラダ油、ワインなどを加えた液に、魚や肉を浸すこと。
ムース* mousse
フランス語で泡の意。ふんわりと仕上げた冷菓で、チョコレートムースなどが代表的。料理では裏漉(うらご)し肉、魚などに生クリームをあわせ、型で固めたものをいう。
ムニエル* meunière
魚料理。塩、こしょうした魚に小麦粉をまぶして焼く。粉ひき娘を形容したといわれ、シタビラメがよく使われる。
ラグー ragoût
たっぷりの液体の中で長時間煮込む料理。ナバラン(羊肉の煮込み)、ブランケット(子牛肉のクリーム煮)、フリカッセ(鶏肉のクリーム煮)など、煮込み液のクリームやワインによって分類されている。
ルウ* roux
小麦粉をバターで炒(いた)めたもので、ソースやスープの濃度づけに用いる。炒め方で白色、褐色、淡黄色の3種ができる。
ローティ rôti
天火で肉類を蒸し焼きにしたもの。肉は大きな塊のまま焼き汁をかけながらオーブンで焼き上げる。→ロースト