フリーセア(英語表記)Vriesea

改訂新版 世界大百科事典 「フリーセア」の意味・わかりやすい解説

フリーセア
Vriesea

パイナップル科のインコアナナスで代表される温室観賞植物。フリーセア属Vrieseaは常緑多年草で,多くは着生種で,葉はロゼット状に広がり,斑点横縞模様があって,葉縁にとげがない。花は穂状につき,赤色や黄色の扁平化した大きな苞を有し美しく,広く観賞に利用される。熱帯アメリカに約250種ある。種間交配によって育成された園芸品種群はオオインコアナナス総称され,扁平な穂状花序に赤色苞を2列につける。花は黄色で短命だが,苞は3ヵ月以上も色あせず美しい。日本ではレッド・キングRed King,キョッコウ(旭光)Kyokko,スーパー・キングSuper Kingなどをみかける。開花時には株もとに3~4本の子苗を生じるので,挿芽をして繁殖する。トラフアナナスV.splendens Lem.は葉がやや硬く粉白をおび,裏面に黒紫色の鮮明な横縞が虎斑(とらふ)状に入るのでこの名がある。扁平花穂は細く長く,橙赤色の苞が1ヵ月以上続いて美しい。高温・多湿好み,繁殖率も低いため栽培は少ない。インコアナナスV.carinata Wawraは最も小型で,扁平な苞は先が黄緑色,基部が朱赤色で美しい。またフリーセア・フェネストラリスV.fenestralis Linden et Andréとフリーセア・ヒエログリフィカV.hieroglyphica E.Morr.などのように横縞模様の美しい観葉種もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリーセア」の意味・わかりやすい解説

フリーセア
ふりーせあ
[学] Vriesea

パイナップル科(APG分類:パイナップル科)フリーセア(かつてはフリーシアと書いた)属の総称。多年草で、熱帯アメリカに150~250種分布する。多くは着生種で、葉は鋸歯(きょし)がない。花は穂状花序をなし、葉の筒状部から長く抽出する。よく栽培されるカリナータ種(インコアナナス)V. carinata Wawraはブラジル原産の小形種。花穂は扁平(へんぺい)で中央は赤色、周辺は黄色である。3~4か月、観賞に堪える。またスプレンデンス種(トラフアナナス)V. splendens Lem.は葉裏は青緑色で黒紫色の横縞(よこじま)が入り、虎斑(とらふ)状になる。花穂は長く、朱赤色の包葉が美しい。オオインコアナナスV. hybrids hort.とよばれるものに旭光(きょくこう)cv. Kyokkô、レッドキングcv. Red kingなどの品種がある。大きな花穂と鮮明な色彩で人気があり、鉢物栽培が多い。繁殖は子株を挿木し、冬は8℃以上に保つ。

高林成年 2019年6月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリーセア」の意味・わかりやすい解説

フリーセア
Vriesea

パイナップル科フリーセア属の総称。中央アメリカ,南アメリカ,西インド諸島に約 250種が分布する。花序全体が鮮かに色づいて観賞価値の高いものが多く,鉢植えが流通する。着生または地生する多年草。細長い葉がロゼットを形成し,基部は筒状をなす。インコアナナス V.carinataは長さ 20cm,幅 1.6~2cmの鮮緑色の葉をもつ比較的小型の種で,扁平な花序は長さ5~6cm。包が左右交互に規則的に並び,下部が赤色,上部が黄色または黄緑色に色づく。花は黄色い筒状花で,包の間から飛出すように咲く。オオインコアナナス V.×poelmanniiは葉の長さ 30~35cm,幅3~4cmになり,株径 35~50cm。鮮紅色の花序は長さ 10~15cmで,しばしば分岐する。トラフアナナス V.splendens灰緑色の地に黒紫色の虎斑 (とらふ) 模様が入る葉色に特徴がある。高温多湿に適するが,夏の直射は葉焼けの原因になるので遮光する。冬期は 10℃以上に保つ。花後に株は枯れるので,株元から出る子株を切り離して新たに育てる。

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世界大百科事典(旧版)内のフリーセアの言及

【インコアナナス】より

…パイナップル科の小型の多年草で,ブラジルの熱帯雨林の樹上に着生している。葉は15~20枚で,ゆるい筒状をなす。葉質は薄く,淡黄緑色で,長さ15~20cm,幅2~3cm。葉縁に鋸歯はなく,やわらかで,全体に少しねじれる。花茎は長さ20~25cmで赤色。先端に長さ4~8cm,幅6~8cmの扁平な花穂をつける。2列に多数つく苞は先端が淡黄緑色でとがり,しだいに黄色になり,基部は赤色で美しい。花は細い筒状で,花弁の先端は黄色で,下部は萼に包まれる。…

※「フリーセア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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