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アメリカの経済学者。保守的な考え方をもつ経済学者のなかで,最も代表的な一人として挙げられる。1932年ラトガース大学を卒業,33年シカゴ大学で修士,46年コロンビア大学より博士号を得た。48年から76年までシカゴ大学教授,のちスタンフォード大学フーバー研究所に移る。フリードマンは,経済活動の基礎には貨幣の働きがあり,とくに貨幣供給量の変化によって経済活動全体の動きが大きく左右されるという信念をもち,いわゆるマネタリズムの考え方を提唱した。また市場制度を通じて自由な経済活動が行われるとき,社会的にみて最も望ましい資源配分が実現されるという,古典派経済学の考え方に新しい時代の衣を着せての啓蒙的な面での活躍も著しい。代表的な著作には《消費関数の理論》(1957),《貨幣的安定を求めて》(1959)などがある。76年ノーベル経済学賞受賞。
執筆者:宇沢 弘文
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…これらの経済には,上述したような最大の総産出量の存在は必ずしも明らかでなくなる。 E.S.フェルプス,M.フリードマンらのマネタリスト(マネタリズム)と呼ばれる経済学者は,1960年代末,物価上昇と失業率との短期的なトレードオフを認めるとしても,長期的なトレードオフ関係についてはこれを否定している。失業率は長期的には物価水準の変化率がゼロまたは一定となる自然失業率の水準に落ち着き,長期フィリップス曲線は自然率で垂直になる。…
… ケインズ学派に特徴的なことは,政府がこうした総需要管理政策を積極的に行うことを主張することである。この点,新古典派経済学(現代ではM.フリードマンらのマネタリズムもこの系譜に属する)が経済の運営を民間部門,あるいは市場機構に任せるべきだとし,政府の介入を嫌うのときわめて対照的である。新古典派が信頼をよせる市場(価格)機構が必ずしもいつも完全に機能するとは限らず,経済は時として総需要の不足に陥ることになるから,そういうときには自由放任主義ではなく政府が積極的な総需要管理政策を行うべきだ,というのがケインズ派の基本的な立場である。…
…第2次大戦後,アメリカの消費需要の予測精度を高めるという目的とS.クズネッツの提起した貯蓄率変動の理論的解明という目的とから,いわゆる消費関数論争が展開された。その論争のなかでM.フリードマンは,恒常所得仮説permanent income hypothesisを提唱した。フリードマンは,実際に観測される所得measured incomeを恒常的所得部分permanent incomeと変動的所得部分transitory incomeに分けたうえで,貯蓄率の変動を前者の恒常所得に依存する長期的趨勢分と後者の変動所得に依存する短期的変動分とに分けて説明しようと試みる。…
…いずれもシカゴ大学がそれぞれの分野で,ある時期に世界的影響を与えたことから発生した用語である。経済学・社会思想の分野におけるこの学派は1940年代のF.A.ハイエクに代表され,ハイエクがシカゴを去ったのちには,マネタリズム(新貨幣数量説)の提唱者でもあるM.フリードマンがその代表的学者と考えられることが多い。ハイエクの思想はアダム・スミスの考えを現代的に深化・拡大したものであり,最もすぐれた現実的社会経済体制は民主主義のもとにおける市場経済であることを,一つの社会経済理論として確立した。…
…たとえば失業を減らすにはある程度のインフレの悪化はやむをえない,という当時(1960~70年代)の一般的考え方の根拠ともなった。しかし1960年代に新貨幣数量説(〈マネタリズム〉の項参照)をかかげたM.フリードマンやフェルプスEdmund Strother Phelps(1933‐ )によって,長期的に安定したフィリップス曲線は理論的には存在しえないことが指摘された。すなわち図のような曲線は,人々のインフレ率についての予想が変わらないときのみ(つまり短期にのみ)存在するので,インフレが進行して人々の予想が変化するときは曲線自体が無限に移動するため,図のような安定した関係は消滅するのである。…
…そうした貧困を緩和する政策として,一方で従来の選別的な救貧施策を充実しようとしたのに対して,他方では,むしろ普遍的な制度を活用して解決を図るべきだとする意見が高まった。そこから選別性対普遍性selectivity vs. universalityの論争が続くことになるが,その場合,経済学者M.フリードマンらは〈負の所得税〉という福祉外の普遍的な制度への依存を説き,社会福祉関係者は児童手当という普遍的な福祉制度の拡充を主張した。イギリスの場合,低経済成長が抜本的改正を許さなかったから,現実には選別的な公的扶助を普遍的な社会保険に一体化するという妥協的方策がとられてきた。…
…したがって価値保蔵手段としての通貨という場合にも,現金のみではなく,広義マネー・サプライをみるほうが適切である。
[マネタリズムとマネー・サプライ]
経済理論の分野でマネー・サプライが脚光をあびるようになったのは,M.フリードマンを中心とするマネタリズムの主張に負うところが大きい。フリードマンは,アメリカの50年以上にも及ぶ時系列データを調べた結果,マネー・サプライ残高で名目所得を除した比率(通貨の流通速度)のほうが,財政支出で所得を除した比率(所得乗数)よりも安定していることを示し,名目所得に対する効果はマネー・サプライのほうが財政支出よりも安定しているとし,マネー・サプライ・コントロールのほうが財政支出政策よりも有効性が高いと主張した。…
…ケインズ学派を批判して1960年代に台頭した学派で,その首唱者はM.フリードマンである。この学派の人々をマネタリストmonetaristと呼ぶ。…
※「フリードマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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