フレロビウム(読み)ふれろびうむ(英語表記)flerovium

デジタル大辞泉 「フレロビウム」の意味・読み・例文・類語

フレロビウム(flerovium)

超アクチノイド元素超ウラン元素の一。1998年ロシアの研究チームがプルトニウムカルシウム原子を衝突させて生成した。ウンウンクアジウム(ununquadium、元素記号Uuq)の暫定名で呼ばれていたが、2012年にIUPAC国際純正・応用化学連合)により正式名とされた。ロシアの科学者フレロフにちなむ。元素記号はFl 原子番号114。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フレロビウム」の意味・わかりやすい解説

フレロビウム
ふれろびうむ
flerovium

アクチノイド人工放射性元素一つ。原子番号114、元素記号Fl。1998年にロシアで初めて合成され、2009年にアメリカ、2010年にドイツでも合成が確認された。暫定名称ウンウンクアジウムununquadium、暫定記号Uuqとされていたこの元素に対して、2012年5月30日、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)は、元素名をfleroviumとし、元素記号をFlとする正式決定を発表した。命名理由はロシアのフレロフ核反応研究所(英語名 Flerov Laboratory of Nuclear Reactions)の伝統と名誉によるとされ、その創設者であるロシアの核兵器開発者ゲオルギー・フリョーロフГеоргий Николаевич Флёров/Georgy Nikolayevich Flyorov(1913―1990)個人の業績に属するものではない、とされている。同年6月、日本化学会は日本語元素名をフレロビウムとした。

 2012年までに、94番プルトニウムと20番カルシウムとの核衝突実験で質量数285から289までの同位体の生成が報告されている。いずれもきわめて不安定であり、112番コペルニシウムへα(アルファ)崩壊するが、確認された半減期は長くても数秒程度とされている。また、同時に正式名称が決定された116番リバモリウムのα崩壊によっても生成する。

 フレロビウム原子核の陽子個数(原子番号)114は、核を特に安定化する「魔法数」の一つに相当しており、中性子の魔法数の一つである184との組合せになるフレロビウム298は特に長い半減期をもつと予想されるが、まだ合成されていない。周期表では14族、鉛の下に位置し、化学的にはかなり安定ではないかとも予想されている。

[岩本振武]


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化学辞典 第2版 「フレロビウム」の解説

フレロビウム
フレロビウム
flerovium

Fl.原子番号114の元素.電子配置[Rn]5f146d107s27p2(推定)の14族元素.周期表での下に位置する(エカ鉛).常温で固体と思われる金属元素.短寿命人工元素.1999年1月にロシアのドゥブナの原子核合同研究所(Joint Institute for Nuclear Research)内のフレロフ核反応研究所(Flerov Laboratory of Nuclear Reactions)で,244Puを標的として48Caで衝撃して,中性子3個と21 s で112番元素285Cn(コペルニシウム)にα崩壊する質量数289の核種1個が得られたと発表された.この崩壊鎖は確認されず,同年6月の再実験で観測された質量数289の核種が最初の確実な合成とされる.同年7月には,日本の理化学研究所のチームが協力して242Puを標的として48Caで衝撃して中性子3個と約5 s でα崩壊する質量数287の核種を得たとしている.s のけたの半減期は超重元素としてはきわめて長く,理論的に予想されていた二重魔法数による“安定の島(Island of stability)”の存在を裏づけるものとされる.質量数285~289の核種が得られており,289Flがもっとも安定で,半減期2.7 s(α崩壊).2012年5月30日,IUPACは,共同研究を行った原子核合同研究所とアメリカのローレンス・リバモア国立研究所の提案に従って,元素名フレロビウム,元素記号Flと決定した.G.N. Flerov(フレロフ)は,実験の行われた核反応研究所の創始者で,研究所名は1991年から,フレロフを冠している.暫定名ウンウンクアジウムと記号Uuqは今後使用されない.[CAS 54085-16-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「フレロビウム」の意味・わかりやすい解説

フレロビウム

元素記号Fl。原子番号114。超アクチノイド人工放射性元素の一つ。1998年にロシアで初めて合成され,2009年にアメリカ,2010年にドイツでも合成が確認された。暫定名称ウンウンクアジウム,暫定記号Uuqとされていた。この元素について2012年5月国際純正・応用化学連合(IUPAC)は,元素名をフレロビウムとし元素記号をFlと正式決定した。名称の理由はロシアのフレロフ核反応研究所の伝統と名誉によるとされる。ただし同研究所の創設者であるロシアの核兵器開発者ゲオルギー・フリョーロフ個人の業績に属するものではない,とされた。2012年までに,94番プルトニウムと20番カルシウムとの核衝突実験で質量数285から289までの同位体の生成が報告されている。しかし,生成は極めて不安定で112番コペルニシウムへα崩壊するが,確認された半減期は長くても数秒程度である。フレロビウムと同時に正式名称が決定された116番リバモリウムのα崩壊によっても生成する。フレロビウム原子核の陽子の個数(原子番号)114は,核を特に安定化する〈魔法数〉の一つに相当しており,中性子の魔法数の一つである184との組合せになるフレロビウム298は特に長い半減期をもつと予想されているが,まだ合成されていない。周期表では14族,鉛の下に位置し化学的には安定とも予想されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フレロビウム」の意味・わかりやすい解説

フレロビウム
flerovium

人工元素の一つ。元素記号 Fl。原子番号 114。1999年にロシアの合同核研究所とアメリカ合衆国のローレンス・リバモア国立研究所の科学者は,プルトニウム244と 242をカルシウム48に衝突させて 114番元素をつくった。114番元素はα粒子(ヘリウム核)を放出して,コペルニシウムに崩壊した。最も長く存在するフレロビウムの同位体(→アイソトープ)の原子量は 289で,半減期は 0.97秒である。国際純正・応用化学連合 IUPACおよび国際純粋・応用物理学連合 IUPAPは名称をフレロビウム,元素記号を Flとした。名称はソビエト連邦の物理学者グレゴリー・N.フレーロフにちなむ。

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