日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロッキング(作業)」の意味・わかりやすい解説
ブロッキング(作業)
ぶろっきんぐ
blocking
連続的で反復的な作業の場合に、作業が一時的に中断したり遅延したりする現象をブロッキングとよんでいる。熟練したタイピストたちの優れた規則的活動でも精密に記録し計測すると、いくつかの反応の束があり、適当な「間」があることがわかる。実験的に色名呼称作業や一桁(けた)の加算作業のようなほぼ等質の作業を行わせて各反応時間を測定すると、比較的短い反応時間が続いて現れるなかに長い反応時間がときどき現れる。
アメリカの心理学者ビルズA. G. Billsは、ブロッキング発生の周期性、休息によって減少することなどから、ブロッキングは周期的におこる神経機能の不応期によるものであり、休息の機能をもつとした(1931)。しかしブロッキング現象のなかにはかならずしも周期性を示さないものもあることが指摘されている。望月享子は、ブロッキングは、作業経過における不可欠な変化として、規則的調節を補うために生じるとともに、課題の効果的達成のために生じるとした(1985)。
内田クレペリン精神作業検査におけるV字型の落ち込みをブロッキングとみることもある。戸川行男らは、内田クレペリン精神作業検査において大きなV字型の落ち込みを示す人はビルズらのブロッキングを多発する傾向があることを指摘している(1973)。産業場面で疲労の測定法として、連続色名呼称法を用いることがあるが、ブロッキングが疲労の指標として用いられている。
[上田雅夫]
『戸川行男監修、清原健司・上田雅夫編『精神作業検査要覧』(1973・実務教育出版)』▽『望月享子著『作業経過の心理学』(1985・東海大学出版会)』