プエブロ(民族)(読み)ぷえぶろ(英語表記)Pueblo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プエブロ(民族)」の意味・わかりやすい解説

プエブロ(民族)
ぷえぶろ
Pueblo

アメリカ合衆国、ニュー・メキシコ州とアリゾナ州に住む北米先住民(アメリカ・インディアン)。16世紀にスペイン人がこの地にきたとき、日干しれんがの密集したアパート式共同家屋に住んでいたためプエブロ(村)と名づけられた。約20の部族からなる総称で、大きく、リオ・グランデ川沿岸に住むタノ(テワ)・プエブロ諸族とケレス・プエブロ諸族の東部諸族と、アリゾナ州に住むホピズニらの西部諸族に分かれる。遺跡から考えて、紀元1世紀から1300年ころまでは現在より北方にいたが、その後、数度にわたって南東と南西に移住したと考えられる。言語的にも4ないし6のグループに分けられる。プエブロはトウモロコシ、カボチャ、豆類を主作物とする灌漑(かんがい)農耕民である。狩猟は生活上は二次的な意味しかもたなかったが重要な仕事であり、シカ、ときにはバイソンを狩った。また、ウサギの集団猟がすべてのプエブロで行われていた。家畜にはイヌシチメンチョウがいた。プエブロは織物、籠(かご)細工、土器作りに優れた技術をもつ。東部諸族は一般に大規模な灌漑を行うため共同労働が必要で、村の結合や統制力が強く、氏族の結合は比較的弱く、治療結社などのさまざまな宗教結社がみられる。他方、西部諸族では、灌漑も行うが雨水を直接利用する率が高いため、村の結合は東部に比べて弱く、逆に氏族の結合が強く、氏族が共同労働や宗教儀礼の単位となる。出自、婚姻形態は一様でなく、同じ東部諸族でもタノ・プエブロは双系的で、妻方居住と夫方居住のいずれもみられるが、ケレス・プエブロ、および西部諸族のホピ、ズニは母系、妻方居住である。

 村はしばしば二つの組に分かれた双分組織をもつが、外婚制を伴ってはいない。プエブロはスペイン人によって強制的にキリスト教に改宗させられたが、長い間、独自の宗教をひそかに保持してきた。さまざまな宗教儀礼や会合キバとよばれる地下聖堂で行われた。伝統文化を比較的よく保持し、保守的、閉鎖的、そして平和的とされている。しかし、他方では、1680年から12年間続いたスペイン人に対するプエブロの反乱は有名である。現人口は5万5330(1990)。

[板橋作美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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