プラセオジム

デジタル大辞泉 「プラセオジム」の意味・読み・例文・類語

プラセオジム(〈ドイツ〉Praseodym)

希土類元素ランタノイドの一。単体銀白色金属空気に触れると淡黄色になる。展性・延性に富む。元素記号Pr 原子番号59。原子量140.9。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「プラセオジム」の意味・読み・例文・類語

プラセオジム

〘名〙 (Praseodym) 原子番号五九の希土類の元素。原子量一四〇・九〇七六五。記号は Pr 銀白色だが空気中では酸化されて黄色く変色する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

化学辞典 第2版 「プラセオジム」の解説

プラセオジム
プラセオジム
praseodymium

Pr.原子番号59の元素.電子配置[Xe]4f 36s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量140.90765(2).安定同位体が質量数141(100%)のみの単核種元素.質量数121~159の放射性同位体が知られている.1842年,C.G. Mosanderはランタン発見した鉱物中に,さらにランタンと性質がよく似た新元素を発見し,ギリシア語双子を意味するδιδυμο(didymos)からDydimium(ジジム)と命名した.1885年に至り,オーストリアのC.F. Auer von Welsbach(ウェルスバッハ)がジジムをさらに二元素に分離し,一方を“新しい双子”Neodymium(ネオジム),他方を緑色の塩を与えることから,ギリシア語の緑を意味するπρασιο(prasios)と合わせて“緑の双子”Praseodimiumと命名した.日本語の元素名はドイツ語の元素名Praseodymの音訳.
モナズ石,バストネス石に含まれる.地殻中の存在度3.9 ppm.中国では全希土類の埋蔵量(30%)・生産量(98%)でともに一位(2007年).溶媒抽出法で希土類相互分離後,塩化物・フッ化物のアルカリ金属塩化物・フッ化物との混合溶融塩電解により得られる金属は銀白色.六方最密構造のα態と,792 ℃ 以上の体心立方構造のβ態がある.融点931 ℃,沸点3512 ℃.密度はα態:6.773 g cm-3,β態:6.64 g cm-3.硬さ6.5.酸と熱水に易溶で,H2 を発生する.第一イオン化エネルギー5.464 eV.酸化数3,4.三価の化合物はほかの希土類と同じく,炭酸塩,シュウ酸塩,フッ化物などが水に不溶.塩類は結晶,水溶液ともに緑色.Pr3+,Pr4+ の電子配置は4f 2,4f 1常磁性.Pr化合物は非常に少なく,Pr2O3を空気中で加熱すると得られる黒色の酸化物はPr O2と表されるが不定比化合物に近い.
Pr4+/Pr3+標準電極電位は2.86 V と強力な酸化剤で,水を分解して酸素を発生させる.このほか,Na2Pr F6はPr塩を F2 雰囲気中で300~500 ℃ に加熱すると得られる.ライター用発火合金の成分の一つ.酸化物はアーク灯炭素電極の成分.塩はガラスの着色に使われる.マグネシウムとの合金は,高張力・低クリープ特性でジェットエンジン部品に使用される.[CAS 7440-10-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「プラセオジム」の意味・わかりやすい解説

プラセオジム
praseodymium

周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされジジムdidymiumと呼ばれていたものを二つの元素に分けることに成功し,一つをネオジム,もう一つを,その化合物は緑色が多いことからギリシア語のprasios(ニラ色の,淡緑色の)にちなんでプラセオジムと命名した。主要鉱石はバストネサイト,モナザイト,ゼノタイムなど。銀白色金属で,空気にふれると酸化皮膜をつくって黄白色となる。展延性があり,酸に易溶。熱水により水素を発生する。化合物は通常3価で,固体および水溶液では美しい緑色を呈する。常磁性。それ以外の酸化数の化合物としてはPrF4やPrO2とPr2O3の混合酸化物であるPr6O11(黒色)などがある。塩化物の溶融塩電解あるいはフッ化物のLi-Mg合金による還元などで得られる。ガラス工業,窯業などで着色剤としてPr6O11が用いられ明るい黄緑色を与える。サングラス,フィルターなどにも用い,青色光から紫外線をよく吸収する。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラセオジム」の意味・わかりやすい解説

プラセオジム
ぷらせおじむ
praseodym

周期表第3族、希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのウェルスバハがそれまで元素と考えられていたジジムdidymiumを分別結晶法によって二つの部分に分け、その一つに含まれる元素をプラセオジムと命名した(他の一つはネオジム「新しい双子」である)。分離した酸化物が緑色であったため、ギリシア語の「ニラの緑」prasiosと「双子」didymosによっている。

 塩化物の溶融塩電解、またはアルカリ金属による還元によって金属を得る。銀白色の金属。空気中に放置すると、表面が酸化されて黄色になり、290℃以上では発火して酸化物となる。熱水や酸に水素を発生して溶ける。酸化数ⅢとⅣの化合物をつくる。

[守永健一・中原勝儼]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラセオジム」の意味・わかりやすい解説

プラセオジム
praseodymium

元素記号 Pr ,原子番号 59,原子量 140.90765。周期表3族,希土類元素でランタノイド元素の1つ。セル石,モナズ石,ガドリン石などの中に,他の希土類元素に随伴して産出する。地殻における存在量は 8.2ppm,海水中の濃度 0.003μg/l 。 1885年 C.ウェルスバハにより,当時単一元素と考えられていたジジムがプラセオジムとネオジムに分離され,それぞれ元素として同定された。単体は銀白色の金属で,融点 935℃,比重 6.782,展性,延性がある。空気中 290℃で発火。酸と反応して溶ける。酸化数3。三酸化プラセオジムは黄緑色。塩類は結晶,水溶液ともに美しい緑色を呈する。常磁性。ミッシュメタル,鉄鋼,非鉄金属材料用添加剤として用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「プラセオジム」の意味・わかりやすい解説

プラセオジム

元素記号はPr。原子番号59,原子量140.90766。密度6.773,融点931℃,沸点3512℃。希土類元素の一つ。1885年F.v.ウェルスバハが発見。銀白色の金属で,常温の空気中では表面が黄色。展性,延性があり亜鉛よりかたい。熱水と作用して水素を放ち,無機希酸によく溶ける。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のプラセオジムの言及

【ウェルスバハ】より

…1880‐82年ハイデルベルクのR.W.ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始め,生涯その研究に没頭した。希土類のジジムは2種の元素の混合物と予想されていたが,85年彼はその分離に成功し,プラセオジムとネオジムと命名した。1907年にはG.ユルバンと独立にイッテルビウムとルテチウムとを分離した。…

【ネオジム】より

…周期表元素記号=Nd 原子番号=60原子量=144.24±3地殻中の存在度=28ppm(28位)安定核種存在比 142Nd=27.13%,143Nd=12.20%,144Nd=23.87%,145Nd=8.30%,146Nd=17.18%,148Nd=5.72%,150Nd=5.60%融点=1024℃ 沸点=3027℃比重=6.80(六方),7.004(立法)電子配置=[Xe]4f45d06s2 おもな酸化数=III周期表第IIIA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされていたジジムdidymiumを二つの新しい元素に分けることに成功し,一つをプラセオジム,他を新しいジジムneodidymiumと名づけたが,現在ではネオジムと称することになった。主要鉱石はセル石,モナザイト,バストネサイト,ガドリン石などである。…

※「プラセオジム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android